2015 Fiscal Year Research-status Report
バイオオイルのin-situ改質によるグリーン基幹化学原料への高選択的転換
Project/Area Number |
15K12266
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
則永 行庸 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (00312679)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオマス / 急速熱分解 / 化学原料 / 接触改質 |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオマスの急速熱分解によるバイオオイル製造は、高いエネルギー変換効率という優位性があるが、生成するバイオオイルの質の低さから、未だ本格的な実用化には至っていない。本研究では、固体触媒を用いたバイオマス急速熱分解生成物の“その場”接触改質に関して検討した。改質反応機構を解明し、改質条件最適化を通じて、バイオマスを選択的、迅速、高効率に、芳香族を中心とするグリーンプラットフォームケミカルズへと転換する改質法の確立を目的とした。 平成27年度においては、管状熱分解反応器とGC およびGC/MSを直結した装置を用いて、バイオマス熱分解生成物のその場接触改質実験を実施した。独自に設計、製作した管状熱分解反応器は、バイオマス試料の急速熱分解部と改質部の温度を独立に制御でき、少量の試料をパルス供給し、生成物の全量をGCに導入することで生成物を詳細かつ迅速に分析できる。GC直結型2台、GC/MS直結型1台の計3台を目的に応じて使い分けた。無機ガス及び C5までの低分子ガスはパックドカラムとTCD、FID(直列)を備えたGCで、ベンゼン以上の高分子量の生成物はキャピラリカラムを備えたGCで分離・定量した。GC/MS直結型は、生成物中に含まれる標準物質が入手困難な化合物の同定用として使用した。定量は基本的には標準ガス及び標準物質を用いた検量線に基づいたが、多岐に渡る生成物すべての標準物質を準備することは困難であった。そこで、検量線を作成できない生成物については、Effective Carbon Numberに基づいて相対感度を求め定量した。これまで検討実績のある杉に加えて、数種類の草本系バイオマス、セルロース、リグニンを試料とした。数種の酸触媒を用いた実験を実施し、改質特性に及ぼす接触時間、反応温度、触媒、バイオマス原料種の影響、原料マイルド前処理効果を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験においては、バイオマス試料粉末約 1mg を 12×12mm に切った目開き 45μm の SUS316 ワイヤメッシュで包み、管状反応器上部に固定し、所定の温度に加熱した反応器下部に落下させることで急速に熱分解した。生成した揮発成分は、下流の改質ゾーンで接触分解し、生成物は直結したGCで分析した。対象試料は、杉、パームヤシ絞り滓、籾殻、ジャトロファ搾り滓、セルロース、リグニンである。改質ゾーンには、触媒粒子を所定量充填する。生成物分布に及ぼす温度、接触時間、触媒種の影響を調査した。加えて、マイルドな条件下(~200℃)での水熱や弱アルカリ前処理による加水分解によりバイオマスのマクロ分子構造を部分的に解重合し、急速熱分解でのバイオオイル発生量を飛躍的に増加させ、目的生成物収率の増加を狙った実験も実施した。特にリグニンを用いた実験において、急速熱分解における揮発成分への転換率増加を狙って、これまでのヘリウムあるいは窒素気流下での実験に代わり、水素を流通ガスに用いた実験を実施した。その結果、550℃の急速熱分解において、チャーの収率が34から26wt%まで減少することを見出した。また、目的生成物である芳香族化合物収率も、ベンゼンで約3倍、トルエンで約2倍に増加した。水素が熱分解反応に作用して、チャー化(重合反応)を抑制したためと考えられる。このような、比較的マイルドな条件(550℃、ほぼ常圧)下で、当初は想定していなかった水素の効果を示すこともでき、計画通り順調に進捗しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
コーキング等による触媒活性劣化などの知見を得るために、粒子連続供給型接触改質装置を製作する。反応器は、バイオマスを急速熱分解する流動層部と接触改質部から構成される。2つの電気炉を用いてバイオマス急速熱分解温度と接触改質部の温度を独立に制御する。また、接触改質部にのみ空気や水蒸気を供給することも可能である。実験では、スクリューフィーダーにより原料粒子を流動層下部に一定速度で連続供給し、急速熱分解する。生成した揮発成分は、直ちに接触改質部にキャリアガスと共に送られる。生成ガスのうち、水素、CO、CO2、CH4については質量分析計でオンライン計測する。C2 以上の 生成物は、生成ガスの一部をポンプで吸引し、サンプリングを経てFIDを備えたGCに導入し、間欠的に分析定量する。急速熱分解温度は、クルードのバイオオイルの収率がも高くなる550℃付近とし、粒子連続供給時の改質特性の経時変化を、接触改質部温度(400-800℃)や接触時間(10-1000ms)を変化させて調査するとともに、実験終了後は、触媒を燃焼し、生成CO、CO2量を測定してコーク析出量を定量する。加えて、改質部に模擬空気および水蒸気を導入し、改質特性や触媒活性の経時変化に及ぼす影響も調査する。
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Causes of Carryover |
設備メンテナンスや流通ガスの節約に努めた結果、当初予定より、実験消耗品購入費等がやや抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ガス分析機器類のメンテナンス、実験に必要な消耗品、学会参加費等に使用する。
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Remarks |
本研究に関連する受賞 2015年9月9日 第47回化学工学会秋季大会・反応工学部会ポスターセッション優秀ポスター発表賞 2015年 日本エネルギー学会:平成27年度「論文賞」
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Research Products
(10 results)