2015 Fiscal Year Research-status Report
新幹線建設に伴う並行在来線経営分離の問題をめぐる政策決定と社会的合意形成の研究
Project/Area Number |
15K12273
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
市嶋 聡之 金沢大学, 人間社会環境研究科, 客員研究員 (40447678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 勝規 富山高等専門学校, 国際ビジネス学科, 准教授 (80311009)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 合意形成 / 政策評価 / 交通地理学 / 地方自治 / 住民参加 / 公共交通政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、新幹線開業に伴って経営分離された並行在来線に関して、「国策」としての政策決定の歴史的過程を整理し、住民参加の合意形成がどのようになされてきたのか、北陸新幹線沿線地域および比較対象地域として東北地方(岩手県と青森県)において具体的事例を調査した。 研究代表者(市嶋)は、政治学や政策科学の諸理論をもとに、鉄道建設および経営に関する政策評価の問題を研究の主軸として、論点の整理を行った。新幹線建設とそれに伴い並行在来線の経営分離が、きわめて政治的な問題でありながら、国会における立法手続きではなく、住民の決定への参加や選挙での争点化を経ずに決定されてきたこと、そして地域経済にとって利点だけでなく、並行在来線の経営分離によって日常的な利便性低下や、自治体と鉄道利用者の負担増などの不利益が生じることを主な論点として提示した。 研究分担者(岡本)は、富山県で沿線住民へのアンケート調査(郵送による)を実施した。調査対象とした富山県は、経営分離された並行在来線(旧北陸本線)が県境の両端に及ぶことから、他の沿線各県よりもサンプルとして最適だと考えて選定した。 研究代表者と研究分担者は、並行在来線経営分離という共通点を持つ沿線地域で共同現地調査を行った。平成27年8月から順次、岩手県、青森県、新潟県、富山県、石川県において、関係者からの聞き取りを実施し、関係自治体における政策決定や住民との合意形成に関する議会議事録や新聞記事(主に各県紙)などの資料を収集している。なお、共同研究を円滑に進めるため、月に一回、情報交換や調査に関する打ち合わせを実施した。 また、平成27年7月には富山市で、平成28年3月には金沢市で、並行在来線を含めた地域交通問題に取り組んでいる市民団体が主催するシンポジウム・フォーラムに参加し、富山県で実施した住民アンケート調査に関して研究分担者の岡本が報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
北陸地方と東北地方における現地調査では、予想以上に膨大な情報が得られたが、滞在時間の制約により資料収集を全うすることができなかった。現地に赴かねば入手できない資料が多く、現地調査の継続が必要となっている。また、並行在来線問題を抱える比較対象地域として、九州の鹿児島と熊本へも平成27年度中に調査実施予定であったが、北陸と東北での調査継続を優先したため、平成28年度夏以降に変更し、それに伴い、国際比較事例としての台湾での現地調査も延期(平成28年度中)を決めた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、国内調査を最優先で実施する。膨大な資料の収集と絞り込みについては、地道な作業でかなりの時間を要するため、対象地域を代表者と分担者で県毎に分担して行うこととする。 九州(熊本と鹿児島)での現地調査を平成28年度夏期に実施する予定だが、4月14日に発生した「平成28年熊本地震」の影響が長期化した場合、調査が困難となるため、台湾と韓国での調査を先行実施することになるだろう。この国外調査は平成28年度9月頃を予定している。 国際比較の事例として、スペイン・フランス・ドイツにおける調査も平成28年度中に予定していたが、他地域の調査が遅れているため、実施時期は早くても平成29年の冬以降になる。各調査結果を分析し総括するためには、研究期間の延長(一年)が必要であると考えている。
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Causes of Carryover |
研究の予定が全体的に遅れていることが最大の要因である。特に、調査旅行の延期により、最大支出分野である旅費(特に海外調査分)とそれに付随する謝金等が次年度に繰り越しになった。また、物品や図書などの費用は、もともとある程度の繰り越しも想定して最低限に抑え、当初想定していなかった必要経費増大に備えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初想定した以上に、現地調査での旅費の出費が増える可能性が高くなった。本研究において旅費が最大支出費目であって、その不足が危惧されるものの、物品費については余裕を持たせておいたので、実際の執行における配分は柔軟に対応したい。 海外出張においては、通訳などの謝金も必要になるし、平成28年度に使用する研究費は大幅に増加するはずであり、前年度の繰越金をもってようやく収支が合うことになるだろう。
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