2017 Fiscal Year Annual Research Report
A study of policy-making and social consensus over the issue of parallel conventional line management separation due to the Shinkansen construction
Project/Area Number |
15K12273
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
市嶋 聡之 金沢大学, 人間社会環境研究科, 客員研究員 (40447678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 勝規 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80311009)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公共交通政策 / 合意形成 / 並行在来線の経営分離問題 / 交通権 / 社会的合意 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまで行ってきた整備新幹線の並行在来線沿線自治体における現地調査を継続し、新潟県の糸魚川市、上越市、妙高市、長野県の信濃町と小諸市を調査対象に選定し、自治体関係者に聞き取りを実施した。昨年度までの国内調査と同様に、並行在来線経営分離に至る決定過程、住民の参加と合意の実態、経営分離に際して生じた問題などについて質問を行った。また、長野県から石川県に至る北陸新幹線並行在来線の経営分離に至る過程を、各種資料やアンケート調査結果から分析を進めて検証した。 最終年度にあたって、ヨーロッパ諸国の鉄道を中心とした海外の公共交通事情に関する比較研究にも着手した。年度末には、日本とは好対照の事例・地域としてドイツ国内3カ所の州政府と運輸連合を訪問し、現地での聞き取り調査を実施した。ドイツにおける調査では、運輸連合という、地域の公共交通全体を統括する組織・団体を訪問し、日本とは大きく異なる公共交通政策の実態を知ることができた。運輸連合については、日本ではほとんど未開拓の研究対象であり、州や地域によってその権限や実態は多様であることから、調査の意義は大きい。ドイツでは、他のヨーロッパ諸国と同様に上下分離方式を採用しているので、鉄道施設は公共財として維持され、「上」に該当する鉄道運行事業者の負担や経営リスクも少なく、住民の交通権保障に関する考え方が根本的に異なることなど、日本のような新幹線(高速新線)開業に伴う並行在来線の利便性低下のような問題がほぼ存在しないことも確認した。 研究期間全体を通じて、国内の整備新幹線沿線自治体の聞き取り調査と、関連資料の分析を行い、並行在来線経営分離に至る政策決定・合意形成過程の共通する問題が明らかになり、日本の交通政策における問題の所在を整理することができた。ここまでの成果をとりまとめることで、引き続き海外との比較研究を発展させることが可能になった。
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