2016 Fiscal Year Research-status Report
途上国におけるトイレ環境の現状と自然・社会・文化的要因の関係及びその問題点
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15K12276
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水野 一晴 京都大学, 文学研究科, 教授 (10293929)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境と社会活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドのアルナーチャル・プラデーシュ州(アルナーチャル・ヒマラヤ地方)のディランモンパ民族の居住地域(ディラン地方)とタワンモンパ民族の居住地域(タワン地方)において、トイレ環境と住民社会について調査を行った。 ディラン地方では住居から離れた場所にトイレをつくり、伝統的にトウモロコシの皮をトイレットペーパーとして使用する。トイレは高床式になっていて、トイレの下でブタを飼っている。タワン地方では住居の中にトイレがあり、高床式で、伝統的にコナラの枯れ葉をトイレットペーパーとして使用している。使用したコナラの枯れ葉は床下に投げ捨てる。床下では最初にコナラやマツの枯れ葉を敷き詰め、その上に使用したコナラの枯れ葉や糞尿がたまり、そこで飼われているブタによって撹拌され、発酵して堆肥ができていく。トイレの床下で生産された堆肥は年に1回、3月に採取され、肥料として農地に撒かれる。 近年はインド政府によって、ディラン地方でもタワン地方でも、トイレの環境・衛生のために、補助金が支給されて、住居に隣接した、水を使用するトイレの建設が進められている。しかし、新しいトイレでは堆肥の生産ができず、伝統的な農業には結びつかず、新しいトイレ建設を受け入れない農家も少なくない。 主にディラン地方の村の中心部では、住居が高床式になっていて、25年ほど前までは入り口の前のテラスで隣人と会話しながら用をたし、テラスの下でブタが飼われていた。しかし、人前で用をたすのが恥ずかしいという若者世代が徐々に周辺のブッシュをトイレ代わりに使用してきた。インド政府が推進している、住居に隣接する新しいトイレは、周辺の環境保護のためには有効的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドのアルナーチャル・プラデーシュ州のトイレ環境と地域社会について、2017年3月に現地調査を行った。アルナーチャルヒマラヤのディラン民族地域とタワンモンパ民族地域において、伝統的なトイレの環境の現況を把握し、その自然や社会との関係を検討した。また、近年、政府により導入されているトイレの実態についても調査した。 研究成果の一部は、2017年3月に開催された日本地理学会春季学術大会(筑波大学)にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も発展途上国のトイレ環境と地域社会について調査を行い、これまで調査を行ったケニアのナイロビのスラム街、キベラやインドのアルナーチャル・プラデーシュ州の調査データと比較し、地域間比較を行っていく。また、研究成果は日本地理学会や熱帯生態学会などで発表し、論文や著書にまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
前年度からの繰り越し金額が多かったため、少し残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(繰り越し金)は少額であるため、翌年度分とあわせて、主に発展途上地域でのトイレ環境と住民社会についての現地調査の旅費として使用する。
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