2015 Fiscal Year Research-status Report
資源と紛争:合意困難性に基づく紛争メカニズムと企業自主規制
Project/Area Number |
15K12278
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
栗田 英幸 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60335883)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 資源の呪い / 資源開発 / 多国籍企業 / 自主規制 / CSR / 民主制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度予定したいた作業は、①理論整理・統合1(資源の呪いメカニズムを資源利益への過剰依存経済からのみ引き起こされるものと過剰依存がなくとも引き起こされるものに分離してフィリピンの事例によって後者のメカニズムを実証)、②理論整理・統合2(多国籍企業の果たしうる役割について整理)の2である。 ①については、別欄(現在までの進捗状況)で述べた理由により一部作業を次年度に繰り越しざるを得なくなっており、2部構成の予定で執筆している調査ノートの前半部分のみを紀要で公表するにとどまった(KURITA, Hideyuki(2015) Case Studies of Medium/large-scale Mines in the Philippines(1), Ehime Keizai Ronshu, 35(1))。本研究ノートでは、既存の「資源の呪い」メカニズムを再整理して、理論的仮説としての資源利益への過剰依存経済を有さない準資源国もしくは準資源国化の途上にある国でも生じ得るメカニズムを抽出した点、そして、合意形成困難性故に資源開発推進が民主制度を破壊せざるを得ない開発のディレンマを新たなメカニズムとして位置付けた点で、非常に斬新な切り口を示している。また、これまで整理した現地調査結果は、その切り口の正しさを支持するものとなっている。 ②については、①作業の遅れにより情報整理の段階にとどまっている。しかし、近年の国際資源市場の予測困難さを主因とした資源開発企業の新規開発への躊躇は、これまでの自主規制を全面に押し出した鉱山改革に対する躊躇を生み出しており、多国籍企業の自主規制を論じる上で、非常に興味深い側面を浮き彫りにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、今年度にフィリピンにて最終的な現地調査を実施し、本研究の理論的枠組みを実証するデータを抽出することとなっていた。しかしながら、今年5月に予定されている大統領選のために調査地が予想以上に混乱をしていたことにより、調査を大統領選の終了後に変更した。そのため、初年度予定の資料の収集・整理こそ終了したものの、その資料をフィリピンの具体的な事例に沿って位置づけ直す作業ができていない。
調査ができなかった分は、最終年度に実施予定のモザンビークに関する分析・調査の準備に費やした。モザンビーク関連省庁との関係構築や情報交換、モザンビークを分析する上での基本的な情報の収集を行った
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Strategy for Future Research Activity |
今年度前半で研究の遅れを取り戻し、今年度中に軌道に乗せる。 フィリピンでの大統領選挙の終了した後に急ぎ現地調査を実施し、その整理を7月までに終了させる。9月末までには②理論整理・統合2、③フィリピンからの仮説提示を終了させ、その結果を紀要に投稿する仮題「Case Studies of Medium/large-scale Mines in the Philippines(2)」。 ④実証分析1としてインドネシア、ミヤンマー、コロンビア、ボツアナ、パプアニューギニアの事例を整理し、2月に現地調査を実施する。当初の予定では実証分析2の対象であるオーストラリアを予定していたが、オーストラリアでの充分な情報を現地調査なしで獲得できるめどがついたことと、本研究の中心的な主張となる実証分析1対象国の事例に厚みを持たせる方が研究インパクトを強化できることから、インドネシアもしくはミヤンマーに調査地を変更することとした。現在、調査可能性を現地専門家と話し合い、情報収集を行っているが、5月中には決定する予定である。 ⑤実証研究2については、すでに大半の資料整理が終了している。⑥資源化開始国分析では本年度も引き続き基礎資料収集及びモザンビークでの調査準備を進める。⑦多国籍企業自主規制分析では、新たな傾向としての多国籍企業の消極的投資時期での姿勢の差に注目し、自主規制機能条件の分析に加えていく。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していたフィリピン現地調査を大統領選挙による調査地の予想以上の混乱により実施できず、当該調査を次年度に持ち越しせざるをえなかった
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
6月に初年度に実施するはずであったフィリピン現地調査を実施する。そこで初年度の繰越し金全額を利用することとなる。 次年度での作業内容に大きな変化はない。海外現地調査1回(上記フィリピン調査とは別)。 以上から繰り越し金および次年度予算は全て次年度の研究で利用する予定である。
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Research Products
(1 results)