2016 Fiscal Year Research-status Report
資源と紛争:合意困難性に基づく紛争メカニズムと企業自主規制
Project/Area Number |
15K12278
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
栗田 英幸 愛媛大学, 国際連携推進機構, 准教授 (60335883)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フィリピン / 資源の呪い / 資源産業 / ミャンマー / モザンビーク / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は、1)フィリピン29鉱山で実施した調査データの整理、2)ミャンマーにおける資源産業の経済影響に関する分析、3)モザンビークにおける資源産業の政治経済影響に関する分析の作業を実施した。 1)では、昨年度に引き続いた分析整理であり、選定29鉱山それぞれの個々周辺地域での民主的な手続きについて、鉱山開発前後に分けて整理した。本作業は、KURITA, Hideyuki(2016)Case Studies of Medium/large-scale Mines in the Philippines, Ehime Keizai Ronshu,36(1)にて公表した。さらに、この論文では、「さらなる分析を必要としつつも、合意形成の困難性は、①被害地域と地域住民参加の最小化、②環境対処と利益分配のミスマネージメント、③全国的な鉱山反対運動と結びついた住民の不平不満を強化し、④企業の抑圧的な手段と分離独立運動の参加の誘発、⑤結果として社会危機と民主主義の悪化を招いている」と結論づけた。さらに、栗田英幸「開発援助」(大野/鈴木/日下『フィリピンを知る63章』明石書店)では、本プロジェクトで得られた資源産業による正負両面の影響を軸にフィリピン開発および開発援助について論じた。 2)、3)では、それぞれミャンマー大学生への特別講義、モザンビーク/ルリオ大学での2度の講演会を通じて、資源産業への依存が民主的な手続きやそれを支える透明性や改善努力を阻害している状況を明らかにした。特に、モザンビークの分析に関しては、資源価格の暴落が「資源の呪い」の特徴と類似した多くの側面を示していること、政治家たちの発言で将来的な資源利益に期待して非透明な政治経済的構造の改革を未だに忌避していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば昨年度に実施する予定であったミャンマーでの調査と詳細な分析、アフリカ諸国に関する情報整理ができていない。ミャンマーの調査に関しては、調査対象であった現地NGO職員や現地住民リーダーが資源開発によって引き起こされた政治的抑圧の対象となってしまい、安全を十分に確保できないと判断した。他の調査対象地を絞り込むのに予想以上に時間がかかり、次年度(29年度)に現地調査の延期を決定した。 アフリカに関する情報整理では、29年度の現地調査対象として選定していた大規模な現地セメント企業が全て、長期化した資源価格の暴落により倒産してしまったこと、分析対象国を南アフリカにも拡大したことにより、予想以上に時間がかかっている。 以上のことから28年度に終了させるはずであった企業の自主規制に関する分析を終わらせることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる29年度は、1)ミャンマー、南アフリカ、モザンビーク、ボツワナでの現地調査と進出企業分析、2)既存研究が十分に存在する原油国の整理を年度前半に整理し、3)モザンビーク、ミャンマーに関しての論文を紀要にて公表した後、本研究の総括を行う。 研究内容については、特に大きな変更はない。
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Causes of Carryover |
実施を予定していたミャンマーの現地調査が次年度に延期され、さらに次年度の現地調査国として南アフリカとボツワナを加えることとなった。それとともに現地での雇用謝金もそちらに多くを振り分ける必要が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ミャンマー調査を5月に実施することとなっており、同時に現地コーディネーターを雇用する手はずとなっている。 さらに、当初予定していたモザンビークでの調査に加えて、旅程の中に南アフリカとボツワナを訪問し、ヒアリングを実施することとなっている。加えて、分析対象地の拡大によって必要図書の変更があり、その対応も次年度に繰り越されている。
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Research Products
(1 results)