2015 Fiscal Year Research-status Report
精神生理的エビデンスに基づいた「さわやかな朝」のインタラクションデザイン
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15K12287
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
小山 恵美 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (80346121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤井 浩子 株式会社豊田中央研究所, ヒューマンサイエンス研究領域, 研究員 (60746767) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 正常睡眠 / 主観的睡眠感 / 目覚め感 / 入眠期 / 睡眠構造 / 起床前漸増光 / 受光量 / 分光分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、睡眠に関わる先行研究調査およびこれまでに蓄積した睡眠計測データの再分析をもとに、「さわやかな朝」の概念を検討した。その結果、個人に適した睡眠時間の確保を前提とした正常睡眠の範囲内であっても日々起床時の睡眠感は変動を示し、「さわやかな朝」の感覚は、起床時目覚め感だけでなく、入眠の円滑さや熟眠度合いも含む睡眠全体の満足感によってもたらされ、睡眠全体の生理的構造(脳波などが示す睡眠段階や体温など自律系変動)によっても影響を受けることが示唆された。 次に、考察した「さわやかな朝」の概念に基づき、蓄積した睡眠計測データ(起床前漸増光照射有無)に加え、新たに計測した10夜/同一被験者(n=3)データを用いて、起床時の主観的睡眠感と睡眠中の生体信号(脳波、眼球運動、心電図、深部体温、体動など)および起床前受光量との関係性について解析を実施した。その結果、「さわやかな朝」につながる環境条件として、起床前の漸増光が有効に作用するためには、一定以上の受光量確保が必要であることが示された一方、起床直前の睡眠状態として、急速眼球運動が頻発するREM睡眠の最中では光の覚醒作用が有効に発揮されないことが示唆された。また、総合的睡眠感のうち入眠についての評価では、主観評価と客観評価とで関係性のある項目は異なり、入眠期は環境や心理的な影響を受けても変化し、主観と客観で差が生じることのある不明瞭なウトウトした状態であると考えられ、自覚もコントロールも難しいことが示唆された。 さらに、光環境を設計する上で、白熱電球以外に蛍光ランプやLEDを用いる場合、分光分布要件の重要性が指摘されているが、ヒトに好ましい覚醒作用をもたらす分光分布要件について、日中の覚醒・緊張方向の作用を中心に、励起光(青・紫)や演色性による影響の差異を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「さわやかな朝」の概念を定義するにあたり、単に起床時の目覚め感にとどまらず、総合的な睡眠満足度や生理的な睡眠構造も考慮する必要性を示唆できたが、睡眠を構成する各要素との関係性について、定量的解析はまだ途中段階である。一方、覚醒作用をもたらす光環境についての研究は当初予定よりも進んでおり、起床前に必要な受光量を一定程度定量化できたことに加え、従来から用いていた白熱電球に加え、LEDを光源として活用する場合の分光分布特性を評価する手がかりを得ることができた。以上の進捗状況を総合的に評価した結果、概ね順調であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
「さわやかな朝」をもたらす覚醒移行期の生理状態変動を明確化するため、起床時睡眠感や覚醒移行期の生理状態、睡眠全体の構造、入眠期評価などの項目間の関係性の定量的評価を進める。さらに、「7~10夜/同一被験者」という終夜睡眠計測例数を増やし、個人内変動に加えて個人間変動の解析を進める。 漸増光照射を用いて「さわやかな朝」をもたらす覚醒移行期の生理状態変動を再現することができるよう、照明装置に生体信号からのフィードバック制御を可能にするシステムを試作する。これにより、例えばREM睡眠の最中にアラーム刺激が発生する確率を下げることが期待できる。さらに、照明装置の制御パラメータとして、照射タイミング・照度・分光分布を制御できることができる照明システムを相関色温度や励起光の異なるLEDを組み合わせて試作し、実験室での終夜睡眠計測により、制御パラメータを比較評価する。
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