2016 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアの祭礼文化における冠物(かぶりもの/頭飾り)の比較研究
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15K12298
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
杉浦 康平 神戸芸術工科大学, 附置研究所, 所長・名誉教授 (00226432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黄 國賓 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (50441382)
今村 文彦 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (50213244)
山之内 誠 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (40330493)
長野 真紀 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科, 助教 (10549679)
さくま はな 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 助教 (00589202)
曽和 英子 神戸芸術工科大学, 附置研究所, 研究員 (80537134)
齊木 崇人 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科, 教授 (90195967)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多国研究チーム構成 / 新羅の金冠 / ジャウク冠 / 神幸祭 / 花傘 / 念仏踊り / シャナ冠 / 曼荼羅と冠 |
Outline of Annual Research Achievements |
6月には韓国「新羅の金冠」…造形の基本とその神話的意味…の研究会を開催しました。本研究会を通して、新羅の金冠は、いわゆる「天と地を結ぶ宇宙軸」、「遺体の魂を守る守護神」、「魂を運ぶ鳥」、「子孫繁栄の象徴」などの意味性が結びついて、一体と成って金冠を形づくったのであると明らかにした。 8月にはインドネシアにおけるバリ島のジャウク冠、寺院屋上の装飾、空間構成原理、伝統舞踊の調査を行い、1)ジャウク冠とバデ(バリ島の葬儀山車)との関係について2)ジャウク冠におけるそれぞれのパーツの意味及びその象徴性について3)ジャウク冠と屋根装飾(プムッププグ)との関係性について4)ジャウク冠とお寺の儀式について5)ジャウク冠のそれぞれパーツの名称、形態について6)ジャウク冠の制作の流れについてを明らかにした。 11月には京都の神幸祭における花笠に関する情報聞き取り調査を行い、手筋商店街組合のメンバー3名と大手筋サービスセンターにおいて会合し、花傘祭りについてのディスカッションを行なった。大手筋商店街組合が、後香宮花傘祭りの運営と継承を担当しているということで、1) 地区内の花傘巡回、2)花傘の制作、3)花傘の構造、造形の継承、4)花・傘の象徴性、利益、5)所作の意味、6)音…など、様々な項目についてのディスカッションを行ない、花傘祭りの現場の声を聞き、祭り進行の現状を把握することができた。 また、日本全国各地には、今も多種多様な民俗芸能が伝承されている。それらはいずれも地域の風土、暮らしから生まれるもので、その踊りや衣装、道具のデザインにはその地の世界観が表されている。2月には各地の民俗芸能の中で使われることが多い「かぶりもの」を中心に、民俗の多様な世界と新たな視点について研究者と意見交換を行い、研究会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、27年度の研究計画においては、アジア各地に現存し、文献や図像に残る多く冠物記録、原資料と比較・分析を行うことで、これまでに明らかにされなかったアジア冠物と、その影響を受けたと仮説される日本の姿を明らかにするという研究内容であったが、本研究では従来、個別に研究されてきた様々な祭祀・儀礼を、デザインと造形的特質を主題に捉えなおし、研究チームの共通の視点(研究会、フィールドワーク)による統合化を試みた。花笠、生命樹、聖獣(竜、鳳凰など)、聖山(須弥山)、曼荼羅、傘蓋姿・形はアジアの冠物や祭礼との結びつきを考察することで、アジ ア圏に共通する神話的造形意味性や象徴性を浮かびあがらせることができた。今年度の達成度は当初の計画以上進展していた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策はこれまでの研究成果を踏まえ、1)「シャナ冠」とアジアの古代宇宙観、須弥山・マンダラなどの象徴性との関連、2)「ジャウク冠」とリ僧侶の儀礼の冠である「ゲルンガン」の造形と意味、屋上を飾る「プムク・ブク」、ジャウクの踊りの神話的・演劇的意味、3)大念仏・大笠における足踏みの呪法、「旋回運動がもたらすもの」の意味、4)朝鮮・新羅の金冠の造形原理と古代の冠・冕冠の造形原理を[シャナ冠][ジャウク冠][大念仏・大笠]三つの冠との比較し、その関連を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成28年12月、日本芸能における花笠調査において予定していた研究協力者が急遽個人の都合のため、シンポジウム(研究会)の開催が得られないことが判明した。本研究遂行上、当該研究者の参画は不可欠であるため、再度日程調整を行ったところ、平成29年2月21日に延期して実施することになった。それに伴い、当初予定より報告書の原稿整理、編集、印刷が遅延することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年8月までに、編集スタッフとの共同作業による編集作業を完了し、校閲、最終確認を経て、出稿し、平成28年12月までに、報告書の完成及び製本が完了する予定である。
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Research Products
(7 results)