2016 Fiscal Year Research-status Report
ミャンマーの照葉樹林帯における生活科学に関する資源利用特性と植生の関係
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15K12300
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
朝比奈 はるか 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 救急部, 助教 (30599197)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミャンマー / チン州 / 照葉樹林 / 植生 / さく葉標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミャンマーにおける照葉樹林の分布域実態調査のために、チン州現地調査の準備として,植民地時代に英国に持ち帰られたさく葉標本調査を2回実施した。 ミャンマーの照葉樹林帯に関係し得る州はカチン州を含め、シャン州北部や東ヒマラヤ山岳地域からの連続する山地帯をもつ州など、複数ある可能性がある。我々はお茶大プロジェクト(科研費 H.21-23、H.25-27)時代よりカチン州とチン州を調査し、近年は山岳地域を内包する東ヒマラヤからベンガル湾沿いに南へ伸びるチン州に特に着目してきた。この地域の標本は国内では牧野植物園標本館にて南チン州を中心に保管され、同定も進んでいるが、アッサムなどの周辺地域のものは明らかになっていないため、中尾佐助の提唱する照葉樹林帯との関連性を説明するには地理的範囲を広げた調査が有益である。そこで本年度はイギリス統治時代から近年にかけての標本を周辺地域を含めて保管していると考えられるイギリスの標本館所蔵のさく葉標本を調査した。王立キュー植物園の標本庫も調査したが、その結果本研究期間においては1900年台前半の標本の揃うロンドン自然史博物館の標本庫を中心に調査してゆくこととした。 調査範囲は主にチン州を中心に周辺地域を調査し、現時点で8科に亘る約50属を調査した。この地域のさく葉標本の調査は系統的に行われたことはないため、昨年からさらに同定に進展のある牧野植物園保管の標本と合わせて、現地調査に欠かせない貴重な基礎データとなると考えられた。これらが照葉樹林帯さらには照葉樹林文化とどのような関係にあるかを今後明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カウンターパートナーの代替わりに伴い、生物多様性条約および名古屋議定書に関して、植物同定のためのサンプル持ち出し許可証の発行が遅れているため、本年度は調査方法を変更することで研究期間内の目標達成を狙っている。昨年度よりミャンマー入りをせず、過去に統治国であった英国に持ち出され保管されている植物採集標本を中心に調査を進めている。英国国内の標本館のなかからロンドン自然史博物館を選び、そこに所蔵の20世紀初頭前後の同定済サンプルを2度に亘り調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
さく葉標本および、市場購入の食材等のミャンマーの自然資源の持ち出し許可が得られれば、チン州あるいは関連地域にて現地調査を行う。その場合、指標植物の標本作製と同定、市場における植物性食材の調査を行い、照葉樹林文化としての生活素材と、これまでの標本調査から導き出される植生との関係を考察する。一方乾季までに許可証が間に合わない場合には、再度イギリス保管の標本調査を行う。それによりこれまで時間の関係で終了できなかった科や属についてもデータを組み入れることで網羅的な標本データの利用による生態学的見地からの、”照葉樹林”とチン州および関連地域との関係や、生活素材との関係を考察する。
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Causes of Carryover |
ミャンマー政府によるサンプル持ち出し許可の取得が遅れているため、現地調査は最終年に計画しているため、費用も次年度へ備えて残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ミャンマー国内のカウンターパートナーによる許可証が収得でき次第、ミャンマーチン州の市場を中心とした現地調査を行う。しかし調査に最適な乾季に許可証が間に合わない場合は、未調査の部分のあるロンドン自然史博物館所有の標本の調査を網羅的行うことで本研究をまとめるため、ロンドン自然史博物館の標本庫を再訪する。いずれの場合についても、最新チン州標本のデータを加えるため、牧野植物園の標本も調査する。
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