2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12315
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
後藤 景子 奈良工業高等専門学校, 校長, 校長 (30243356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安川 涼子 奈良女子大学, 生活環境学部, 特任助教 (30646633)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インクジェット / 大気圧プラズマジェット / 天然繊維 / 羊毛 / 酸性染料 / 濃色化 |
Outline of Annual Research Achievements |
繊維製品への色彩付与は付加価値機能として極めて重要であり、通常染色により行われる。本研究では染色加工技術の一つであるインクジェット染色を取り挙げ、大気中での処理が可能な大気圧プラズマジェットによる表面改質加工を組み合わせることで, 持続可能な繊維染色加工技術を構築するための基本的情報を得ることを目的としている. 試料に羊毛布を用い、大気圧プラズマジェットにより布表面の酸化処理を行ったところ、ぬれ性が著しく増大したことが確認された。X線光電子分光分析の結果、繊維表面の酸素濃度が10%程度増加したことが確認された。プラズマ酸化による羊毛布の損傷を調べるために走査型電子顕微鏡観察を行った結果、布表面の繊維は若干損傷を受けているが、布内部の繊維には変化がないことがわかった。プラズマ処理による布表面の黄変や力学特性の変化は殆どなかった。 ミリング型酸性染料C.I. Acid Green 27を用いて、大気圧プラズマ処理前後の羊毛布の浸染およびインクジェット染色を行った。インクジェット染色では、染色後に蒸熱処理を行い、比較のため、通常行われている薬剤前処理を行った羊毛布も用いた。染色性(濃色化の程度)は染色布のクベルカムンク関数K/Sを分光色差計により測定して評価した。浸染ではプラズマ処理布は未処理布や薬剤前処理布に比べてわずかに濃色化された程度であった。一方、インクジェット染色では、プラズマ処理布は未処理布や薬剤前処理布に比べて短い蒸熱処理時間でのK/Sが大きかった。 以上の結果から、羊毛布のインクジェット染色前にプラズマ処理を行うことで, 薬剤前処理工程の削減のみならず, 蒸熱処理時間短縮によるエネルギー消費が軽減される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気圧プラズマジェット処理による天然繊維(綿、羊毛および絹)の形態や化学組成の変化を走査型電子顕微鏡やX線分光分析により調べ、処理による表面変化を明らかにしている。インクジェット染色の前処理として、大気圧プラズマジェット処理が有効であることが羊毛布を用いて確認された。従来の尿素前処理法と比較して、短い蒸熱時間で濃色化が行えることがわかり、エネルギー消費の観点からも有効であることが示唆された。 上記の結果は繊維学会誌に2報の原著論文としてすでに掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
3つのタイプの酸性染料(ミリング、ハーフミリングおよびレベリング)を用いて、羊毛のインクジェット染色を行う。大気圧プラズマジェット前処理と尿素前処理の濃縮化効果の比較、プラズマ前処理による濃色化機構の検討を行う。また、染色布の顕微鏡画像を解析する方法で、滲みの評価を行う。実用的観点から、染色布の摩擦および洗濯堅牢度に及ぼすプラズマ前処理の影響も検討する。さらに、合成繊維であるナイロンを用いて一連の実験を行う。
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Causes of Carryover |
備品で購入したインクジェットプリンタの年間保守契約に奈良女子大学と販売業者間で締結できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要な消耗品、論文投稿料・別刷代に使用する
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Research Products
(3 results)