2015 Fiscal Year Research-status Report
新たな発がん理論に基づくがん予防食素材のスクリーニングシステムの構築
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15K12329
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
矢野 友啓 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (50239828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 洋美 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30506887)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / 癌幹細胞 / 癌予防・治療 / 低酸素条件 / ファイトケミカル |
Outline of Annual Research Achievements |
国内外のセルバンクから入手可能な男性ホルモン依存性および非依存性のヒト前立腺癌細胞を購入し、各メーカーの低吸着性細胞培養プレートないしは細胞の吸着性を低下させる試薬(polyHEMA)で前処理をした細胞プレートと癌幹細胞形成選択培地を用いて、sphere形成能を指標に前立腺癌幹細胞の分離を試みた。その結果、ホルモン非依存性前立腺癌細胞(LNCaP)およびホルモン非依存性前立腺癌細胞(PC3)からそれぞれ、sphere形成能が高いクローンの分離に成功した。次に、sphere形成能が高いクローンの中で、癌幹細胞マーカー(CD24, CD44, SOX2, CD133)の発現レベルが高い癌幹細胞が濃縮されているクローンを選択した。この選択したクローンを用いて通常の2次元培養を行った時、何継代で幹細胞性が消失するか検討し、5継代で幹細胞性が消失することが判明した。この結果から以後の検討には、幹細胞分離後4継代目までのクローンを使用することにした。さらに、最終的にsphere形成能が高いクローンの幹細胞性を確認するために、ヌードマウスに移植し、腫瘍形成能を野生株と比較したところ、sphere形成能が高いクローンほど腫瘍形成能が高く、spehere形成能が高いクローンに癌幹細胞が濃縮されていることが確認された。最後に、野生株と幹細胞が濃縮されたクローンの癌幹細胞の形質の最大の特徴である低酸素適応能力を比較したところ、後者の方が高い低酸素適応性を示した。以上、前立腺癌幹細胞を標的にした癌予防・治療に有効なファイトケミカルをスクリーニングする評価系が構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低吸着性細胞培養と癌幹細胞培養用選択培地を組み合わせることで、前立腺癌幹細胞を豊富に含むクローンの分離に成功した。また、このクローンの幹細胞性は複数の癌幹細胞マーカーの高発現、ヌードマウス移植系における高腫瘍形成能、高い低酸素条件適応性から確認された。さらに、男性ホルモン依存性および非依存性の前立腺細胞株から癌幹細胞を濃縮できたことから、この細胞培養系を使って、前立腺癌予防および治療に有効な機能性成分のスクリーニングが可能になると推測された。以上、本年度に計画した幹細胞培養系の確立とその培養系を使ったスクリーニングシステムの構築は達成されたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前立腺癌の予防・治療に有効と思われる食機能性素材をデーターベースから絞り込む。その有効性をメタ分析等の統計学的手法で検証し、可能性が高い予防成分をさらに絞り込む。絞り込まれた成分を用いて、通常の培養系で前立腺癌細胞の増殖抑制効果を検証し、その有効濃度が臨床応用可能な濃度かを確認し、本研究で使用する成分を決定する。前年度に構築された前立腺癌幹細胞系を用いたスクリーニングシステムで特定された成分の前立腺癌予防・治療における可能性を探ると同時に、癌幹細胞を移植したヌードマウス移植モデル系での有効性をその成分の生体内動態等を考慮に入れ、検証する。以上の結果を総合して、本研究を通じて構築されたスクリーニング法が前立腺癌の予防・治療に有効な成分のスクリーニングに適しているか判断する。
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