2016 Fiscal Year Research-status Report
Inquisition of cytokines and chemokines in breast milk involved in the development of immune function in neonate and the elucidation of the mechanism.
Project/Area Number |
15K12336
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
茶山 和敏 静岡大学, 農学部, 准教授 (30260582)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CCL28 / 大腸 / 腸内細菌叢 / 新生仔 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス新生仔の人工保育実験法を用いて、母乳中CCL28の新生仔に対する機能性を検討した。 CCL28含有人工乳でマウス新生仔を人工保育した結果、免疫器官である胸腺、脾臓および小腸、盲腸、大腸などの臓器重量は、対照群と差が見られなかった。また、小腸のパイエル版の数や大きさにも影響がみられなかった。また、胸腺及び脾臓の免疫細胞数とその種類及び割合をフローサイトメトリー法によって解析した結果、両免疫器官内の免疫細胞に対してはCCL28投与による影響がみられなかった。 一方、CCL28は抗菌作用を有することが判明していることから、新生仔の腸内細菌叢形成に関与している可能性を考えて、人工保育後の大腸中の腸内細菌叢を分析した。大腸を採取後、PBSで流洗し、得られた大腸内容物中のDNAを分取して、4種類の腸内細菌叢についてDNA解析を行った結果、新生仔の腸内細菌叢形成の際の初期に多く見られる大腸菌類がCCL28投与群で少なく、乳酸菌類が多い傾向がみられた。 以上の結果から、母乳中CCL28は免疫器官である胸腺や脾臓に対しては直接的な影響を及ぼさない可能性が示唆された。そして、小腸の免疫機能には特に影響を示さなかったが、大腸での腸内細菌叢の形成に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。 また、CCL28ノックアウトマウスを作成して、自家繁殖によって実験に用いるために数を増やしており、そのフェノタイプを検討している。そのフェノタイプについてはまだ検討の途中で、結果はまとまっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
母乳中CCL28は、その機能が類似している母乳中CCL25とは異なり、新生仔の免疫器官および小腸への効果は特にみられなかったものの、大腸、特に大腸内の腸内細菌叢形成に関与していることが判明した。この結果は、現在注目されている腸内細菌叢の役割、特に、まだまったく分かっていない新生児の腸内細菌叢形成に関する初めての成果であり、この研究を進めることで、新生児用人工乳の新たな添加物としての可能性を広げる重要な研究成果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの人工哺育実験では、マウス新生仔の大腸のパイエル板および孤立リンパ小節に対する母乳中CCL28の影響を確認していなかったことから、人工保育実験の追加実験を行って、それらの発達に対するCCL28の効果を検討していく。また、CCL28による腸内細菌叢の形成について、より詳細なDNA解析を行って、腸内細菌叢内で、いかなる腸内細菌がCCL28によって影響を受けているかを詳細に解析する。 また、現在、CCL28のノックアウトマウス(CCL28・KOマウス)を作成して、腸内細菌叢を含めたそのフェノタイプを確認する。そして、CCL28・KOマウスを用いた正常新生仔の代理哺育実験を行って、母乳中CCL28のより詳細な機能性を検討していく。特に、CCL28欠損母乳を飲んだ正常マウス新生仔の大腸内の免疫器官の発達と腸内細菌叢形成について詳細な検討を進めていく予定である。 さらに、母乳中IL-7が新生児の胸腺発達に関与している可能性を示唆する論文が発表されていることから、母乳中IL-7の機能性についても併せて検討する予定である。
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Remarks |
本研究の成果は特許を申請する予定のため、本研究に関する論文や学会発表による研究成果の発表はこれまでまったく行っていない。 特許申請後に、本研究で得られた成果を発表する予定である。
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