2015 Fiscal Year Research-status Report
十二指腸粘膜で鉄吸収を抑制する鉄濃度感知システムの解明
Project/Area Number |
15K12344
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
篠田 粧子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (40132055)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 鉄欠乏 / DMT1異性体 / 鉄吸収 / 小腸 / 鉄過剰 / 粘膜ブロック |
Outline of Annual Research Achievements |
過剰鉄の摂取により鉄吸収が抑制される“粘膜ブロック”が、これまでの報告より極めて低濃度、短時間で見られ、サプリメント摂取でも誘発される可能性を報告した(Am.J. Physiol, 307: G89-97, 2014)。この現象は鉄欠乏によって鉄吸収能が亢進した小腸でのみ認められ、過剰鉄への応答が極めて早いことから粘膜上の鉄輸送体divalent metal transporter 1:(DMT1)の機能によると考えられる。DMT1にはN末端、C末端の異なる4種類の異性体が知られており、鉄欠乏ではDMT1+IRE発現が亢進する。鉄欠乏で亢進した鉄吸収が抑制に転ずるには小腸内の鉄過剰がモニターされる必要があるが、DMT1+IREのみに鉄濃度をモニターする機能があるか定かではない。“十二指腸粘膜細胞が鉄濃度をモニターする仕組み”の解明を目的として、鉄の栄養状態とDMT1異性体の挙動を詳細に調べた。 平成27年度は、主として「実験1:DMT1異性体発現と細胞内局在、鉄への応答」に取り組んだ。通常および鉄欠乏ラットを作成し、小腸各部位のDmt1スプライシング異性体mRNA発現をreal-time PCRにより解析した。Dmt1-1A、Dmt1-IRE、Dmt1-nonIRE mRNA発現量は十二指腸で最も高く、ついで小腸上部で高い発現を示したが、中部、下部での発現量は極めて低かった。さらに、十二指腸と小腸上部のDmt1-1A、Dmt1-IRE、Dmt1-non-IRE mRNA発現量は、鉄欠乏に応答して発現が亢進し、特に十二指腸Dmt1-1A(12.1倍)、Dmt1-IRE(10.8倍)で顕著であった。また十二指腸凍結切片の免疫染色により、粘膜上皮細胞のDMT1タンパク質異性体発現を定量的に解析するプログラムを作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの実験で、小腸各部位のDmt1スプライシング異性体mRNA発現に及ぼす鉄欠乏の影響について明らかにし、mRNA発現の変動から小腸上部(特に十二指腸)を今後の研究のターゲットとすることを決定した。現在、各異性体の細胞内局在を明らかにするため、DMT1発現量を定量的に解析するプログラムの作成まで進んでいる。小腸の凍結切片は微絨毛を縦に切断しているため、粘膜細胞以外の細胞の核も染色される。粘膜上の輸送体に結合した蛍光強度を核の数で除して定量化するため、細胞イメージングアナライザーの解析ソフトで粘膜細胞層を選択的に識別するプログラムを検討し、作成した。このプログラムを用いて各異性体発現の鉄への応答を解析し、即時的粘膜ブロックに関与する異性体の候補を絞り込む。このプロトコールの作成に時間を要したため、予備実験による最適な無細胞膜タンパク質発現キットの選定が実施できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、細胞イメージングアナライザーの粘膜細胞層を選択的に識別するプログラムを用いて、鉄欠乏に応答するDMT1異性体発現を定量的に解析し、その局在について調べる。また、通常および鉄欠乏のラット十二指腸に異なる濃度の鉄を投与し、作成した十二指腸の凍結切片でDMT1タンパク質の細胞内局在の変化について検討する。鉄濃度に強く応答するDMT1異性体を、無細胞膜タンパク質発現システムを用いて発現させ、鉄濃度を変化させた場合の膜における安定性について評価したい。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に予定していた実験が遅れたので、無細胞膜タンパク質合成キット(合計約40万円)分を平成28年度に繰り越したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に実施する無細胞膜タンパク質合成のキットを購入する。
|