2016 Fiscal Year Research-status Report
腸管膜粘液分泌が関わる排便機構の解明:CFTR遺伝子多型と慢性機能性便秘との連関
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15K12350
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Research Institution | Jin-ai University |
Principal Investigator |
浦本 裕美 仁愛大学, 人間生活学部, 准教授 (50390696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤塚 結子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (90321611)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CFTR / 便秘 / 食物繊維摂取量 / 水分摂取量 / 遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性機能性便秘(以下、便秘)の発症は、食物繊維の摂取量不足をはじめ様々な要因が関与していると考えられている。我々は、腸液分泌に関与するクロライドチャネルの一つであるCystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator (CFTR) クロライドチャネルを便秘発症の要因の一つと考え、その働きを活性化する成分を含む食品摂取の便秘改善効果を昨年検討した。その結果、便秘改善効果が食物繊維摂取量に影響されることを認めた(第70回日本栄養・食糧学会)。そこで本年度は、食物繊維摂取量(水溶性・不溶性・総)に加え、水分摂取量等の影響についても改めて解析し、CFTR活性作用をもつ成分摂取の効果を検討した。また、日本人にみられるCFTR遺伝子多型の1つで、CFTRチャネル活性の強さに大きく影響するM470Vと便秘との関連性について検討した。その結果、以下のことが明らかとなった。便秘群では、日常の食物繊維摂取量および水分摂取量が少ない摂取者(それぞれ10g未満/日、1,300mL未満/日)にのみ便秘症状の改善効果がみられ、一方、非便秘群では、日常の食物繊維摂取量、水分摂取量が多い摂取者にのみ改善効果が見られ、便秘群と非便秘群では、改善効果を与える条件が異なってくると考えられた。また、被験者のM470V変異の解析結果は、全体でみると、M/Vタイプの割合が最も多く他の報告と一致していた。しかし、便秘群の有訴者でのその発生率について非便秘群の有訴者と比べると、前者では、M/Mタイプの割合が多くなっており、このことは、既に報告されているCFTR関連疾患者と健常者での発症率を比較した結果と一致した。CFTR機能はM470V変異のみで決定するのではなく、他の変異との相互関係で決まるので、今後、他のCFTR変異についても解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アンケート等の便秘改善効果を確認するデータ量が多いため、予定していたよりも解析に手間取り、進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で予定していたとおり、昨年度に解析できなかった分のCFTR遺伝子変異の解析を行っていく予定である。また、計画にはなかったのだが、ROMEⅢの診断による便秘の有無とCFTRとの関係について、CFTR活性のスクリーニング方法である汗中のNaCl濃度の測定を、初年度の被験者(20歳前後)とは異なる年代の女性についても調べ検討を加える。便秘の症状は年齢の増加、特に60歳を過ぎた頃から悪化する傾向にあるので、30~60代の女性を対象にして実施予定である。
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Causes of Carryover |
初年度実施の試験食摂取実験の便秘症状の改善効果を確認するアンケート(被験者39人に約4か月間毎日実施)の集計・解析に時間や労力が予想していたよりかかり、遺伝子変異の実験を予定通り進められなかったため、実験に必要な消耗品等の購入を控えたのと、分担者との打ち合わせに必要な旅費を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下の使用を計画している。①残している遺伝子変異解析実験に必要な消耗品を購入。②研究分担者との打ち合わせ等に旅費を使用する予定がある。③汗中のNaCl濃度と便秘との関係について、現在のところ20歳前後者のデータがあるのだが、年代による違いについても検討したいので、汗中のNaCl濃度の測定に必要な消耗品を購入予定である。④昨年度までの成果発表:専門雑誌への投稿に必要な経費。
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