2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒト薬物代謝酵素を用いたマイコトキシン汚染食品の浄化技術に関する研究
Project/Area Number |
15K12354
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
今石 浩正 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 教授 (50223318)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アフラトキシン / P450 / CYP3A4 / 解毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフラトキシンB1(AFB1)は、主にAspergillus flavus (A. flavus)により産生されるマイコトキシンの一種で、変異原性、発がん性を持つことが知られている。防カビ剤や熱処理、オゾンガス、放射線照射などがA. flavusの生育阻害やAFB1の不活性化のために用いられているが、食品にダメージを与えず付着したこれらのAFB1を効率よく解毒可能な方法とはなっていない。そこで本研究では、ヒトの薬物代謝酵素を利用することで、常温・常圧下でAFB1を解毒する手法の開発を試みた。 RT-PCRにより、ヒトCYP3A4cDNAを取得した。 次に、CYP3A4 cDNAをP450発現プラスミドであるpCWROmpA-Lへと挿入することで、ヒトCYP3A4を高発現させた組換え大腸菌を調製した。その後、AFB1標品、A. flavus 懸濁液またはA. flavus 感染食品をCYP3A4発現大腸菌菌体と直接反応させた。AFB1代謝物と代謝物の変異原性について、HPLC分析およびUmuテストにより各々評価した。さらに、CYP3A4発現大腸菌を凍結乾燥することによる長期保存の可能性に関して、常温で7~14日間保存した後にAFB1代謝能を測定することで評価した。その結果、AFB1代謝物は、アフラトキシンQ1(AFQ1)であることが判明した。一方、本代謝物に対してUmuテストを行った結果、AFQ1は変異原性を失っていることが明らかとなった。また、凍結乾燥CYP3A4発現大腸菌に関しては14日間の保存後もCYP3A4によるAFB1代謝能は失われることがないと分かった。さらに、凍結乾燥保護剤としてスクロースを加えると長期保存後の活性が多く残存することも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の理由により当初計画以上に進展していると判断した。 1)CYP3A4発現大腸菌菌体によりAFB1標品を代謝させた後、HPLCにより分析した結果、AFB1代謝物と見られるHPLCピークが観察された。LC-MSによる分析から、このHPLCピークは、アフラトキシンQ1(AFQ1)であることを明らかにできた。 2)一方、本代謝物に対してUmuテストを行った結果、AFQ1は変異原性を失っていることが明らかとなった。AFB1を生成することを確認したA. flavus 懸濁液を用いた場合も同様に、AFB1が代謝されていることが確認できた。 3)さらに、イムノアフィニティーカラムを用いたアフィニティー精製により、時と千サンプルからのアフラトキシン類の回収にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)一昨年度の実験では、実汚染食品サンプルとしてA. flavus 感染食品を用い、本システムによるAFB1解毒能を評価したものの、AFB1を検出することができなかった。分析する前のAFB1量が少なすぎて検出できなかったことが原因であると考えられる。そこで、供試する汚染サンプル量を10倍を上限に増やす事で、この問題の解決に当たる予定である。 2)また、凍結乾燥CYP3A4発現大腸菌に関しては14日間の保存後もCYP3A4によるAFB1代謝能は失われることがないと分かった。また、凍結乾燥保護剤としてスクロースを加えると長期保存後の活性が多く残存することも分かった。今後は、より長期間の保存(最長10月間)により、本凍結乾燥大腸菌によるアフラトキシン類の代謝効率がどの様に変化するのかについて詳細な解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
アフラトキシン分析の過程で、蛍光標識法を用いたHPLC分析法を検討する予定であった。この際、高額な蛍光性試薬を購入する予定を考えらていたが、今回の研究により蛍光法を用いない場合でも充分な検出感度を得られることが判明した。よって、予算的に当初計画額を下回る結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は計画最終年度につき、実汚染サンプルを用いた解析を中心に本研究を推進する。特に、LC-MS法を用いた機器分析に対する出費が増える事が予想される。そこで、本年度は、これらの機器分析に必要な消耗品購入を中心に予算執行を進める予定である。
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