2016 Fiscal Year Research-status Report
料理構造を料理の式で表現することによる新規料理分類法の開発
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15K12359
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
石川 伸一 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (00327462)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 成分分布 / 可視化 / 浸透 / ハイパースペクトルカメラ / 揚げ物 / 煮物 / 料理 |
Outline of Annual Research Achievements |
人は食品の外観、香り、味、食感等を五感で感じ、おいしさを評価している。食品中の成分や調理により添加された調味料の濃度分布等は、風味や食感に影響を与えるため、おいしさを決定する重要な要素となっている。しかし、食品中の成分に関しては含有成分の同定や定量等の成分分布を配慮しないパラメーターを対象とする研究がほとんどであり、食品中の成分や調味料等の濃度分布を可視化した研究は少ない。したがって、食品中の成分や調味料等の濃度分布が十分に分かっていない料理が多いのが現状である。例えば、揚げ物は油が食品中のどこまで浸透しているのかが十分に分かっていない。煮物は煮汁が食品中のどこまで浸透しているのか、保存温度の違いにより煮汁の浸透に差はあるのかが十分に明らかにされていない。本研究では、ハイパースペクトルカメラとデジタルカメラを用いて、揚げ物における油や煮物における煮汁に関し、時間経過と保存温度の違いによる浸透程度の観察を行うことを目的とした。 <揚げ物>すべての実験試料において油の浸透は衣までであった。揚げている最中には水分と油の置換が起きる。油の浸透が衣までであったのは、衣内の水分と油だけが置換したためであり、衣が食材への油の浸透を防いでいると考えられる。また揚げてから時間が経っても油は内部まで浸透しなかった。保存温度の違いは油の浸透に大きな影響を与えなかった。天ぷらの放置時間の長さによるサクサク感の損失は油が時間経過とともに衣や食材内部に浸透するためだと考えていたが、油の影響ではないと考えられる。 <煮物>ハイパースペクトルカメラでの観察の結果、常温保存の試料の方が冷蔵保存の試料より煮汁が浸透した。よってより高い温度で保存するほど煮汁は浸透し、これまで言われてきた「冷えるときに味はしみこむ」とはいえないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
揚げ物における油および煮物における煮汁の浸透の観察をハイパースペクトルカメラとデジタルカメラを用いて行った。どちらもおおむね順調に研究を推進してきた。今回導入したハイパースペクトルカメラは、二次元の位置情報を持った画像と数十バンド以上の波長情報を取得することができ、様々な分野で物質の識別等に用いられている。近年、食品分野でも食品中の成分分布を可視化する研究に用いられている。実験は、以下のような方法で行った。 <揚げ物>実験試料として鶏ササミ、エビ、サツマイモ、ナスを用い、脂溶性色素スダンⅣで染色した油で天ぷらを揚げた。揚げた試料は、冷蔵(約4℃)、常温(約20℃)、ホットショーケース(約50℃)で保存し、1分後、1、3、6時間後に試料の中心を包丁でカット後、断面をデジタルカメラで観察した。 <煮物>実験試料としてダイコン、コンニャク、ジャガイモ、ニンジンを用い、水溶性色素青色1号で着色した煮汁で煮物を作製した。沸騰してから15分煮込んだ後、試料の中心を包丁でカット後、断面をデジタルカメラおよびハイパースペクトルカメラで観察した。また沸騰後15分煮込んだ各試料を鍋ごと冷蔵、常温で保存し、保存開始から1、3、6、24時間後および24時間経過後再加熱してから試料の中心を包丁でカット後、断面をデジタルカメラおよびハイパースペクトルカメラで観察した。 今後、この食品中の成分分布を「料理の式」で表現し、客観的な料理の評価に使用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに多くの食品中の成分や調味料等の濃度分布を可視化し、観察することが必要である。そして、食品中の成分の空間的配置や存在状態などを明らかにすること、テクスチャーや風味との関連性を交えて検討することにより、おいしさの物理的解明につながることが考えられる。さらに、食品構造に関する研究が進めば、最適な調理方法の検討や新商品の開発などへの応用も期待できる。
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Causes of Carryover |
直接経費の物品費の購入が比較的本年度は抑えられたため。大きな理由としては、既存の設備・備品等を活用したため、新たに購入する物品が減ったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、より規模を大きくすること、さらに実験回数を増やし正確性を確かめることに重きを置いて実験を進める予定である。
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