2015 Fiscal Year Research-status Report
ビフィズス菌の難消化性糖利用能を標的としたカスタムメイドプレバイオティクス研究
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15K12361
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
吉川 悠子 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (00580523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 典男 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10169039)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ビフィズス菌 / オリゴ糖 / プレバイオティクス / ラクトバチルス属菌 / RFLP |
Outline of Annual Research Achievements |
ビフィズス菌の難消化性オリゴ糖に対する資化性について、菌培養液の濁度を指標として評価するため、培養条件の検討を行った。ビフィズス菌検出用のTOSプロピオン酸培地から転移ガラクトオリゴ糖(TOS)を除いたものと基礎培地として用いた場合でも、嫌気性菌の炭水化物資化性試験に用いられるpeptone yeast extract (PY)培地での結果と同じ傾向を示したことから、TOSプロピオン酸培地のTOSの代わりに各糖試料を最終濃度0.5%で添加した培地にて、37℃で24時間嫌気培養後の増殖を比較することとした。 また、ヒト糞便試料を扱う前段階としてマウスを用い、糞便からのビフィズス菌の分離を試みた。ビフィズス菌は哺乳期のマウス糞便からのみ10株分離することができた。一方で、ビフィズス菌と同じくプロバイオティクスに汎用されるラクトバチルス属菌は7-8週齢のマウス糞便より数多く分離されたため、ビフィズス菌と共にラクトバチルス属菌でも簡易的な制限酵素断片長多型(RFLP)による菌種同定法の検証を試みた。ビフィズス菌10株のhsp60遺伝子およびラクトバチルス属菌45株のPhenylalanyl-tRNA synthase alpha subunit (pheS)遺伝子をPCRにて増幅し、ビフィズス菌はHaeⅢ、ラクトバチルス属菌はHhaI, RsaI, Sau3AIおよびSau96IによるRFLP解析を行った。その結果、ビフィズス菌はすべてB. pseudolongum subsp. pseudolongumと推測された。ラクトバチルス属菌は9菌種に分けられ、L. reuteri (18/45)、L. kalixensis (10/45)が優占種となっていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はビフィズス菌を用いた難消化性オリゴ糖資化性試験系の確立および糞便分離株の菌種同定法について行った。資化性スクリーニングのための試験系の確立については、ビフィズス菌基準株および菌種同定済みのヒト分離株(計9菌種16株)を用い、培養条件の検討をした。その結果、PY培地よりも簡単に調製可能であるTOSプロピオン酸培地を基にした基礎培地によるビフィズス菌の増殖度の比較が可能となった。 先行研究において、ビフィズス菌がマウス腸内細菌叢に占める割合は低いものと考えられたため、本研究の計画段階ではヒトから分離される複数のビフィズス菌基準株をさまざまな比率で混合してマウスに投与し、糞便から菌を分離してRFLP解析の検証を行う予定であった。しかし、本研究では腸管内に定着している菌に焦点をあてていることから、ヒトと同様に腸内細菌におけるビフィズス菌の割合が多いと思われる哺乳期のマウスの糞便からビフィズス菌を採取することに変更した。しかし、得られたビフィズス菌分離株はすべて同一菌種であり、多様性が非常に低かった。そこで、視野をプロバイオティクスとしてビフィズス菌と同様に汎用されているラクトバチルス属菌へも広げ、4種類の制限酵素によるRFLPを組合せたラクトバチルス属菌の簡易的菌種同定法を開発し、マウスの腸内ラクトバチルス属菌の優占種を特定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
腸内細菌叢を構成する他の細菌やC. perfringensや大腸菌などの有害細菌を用いて糖資化性試験を行い、難消化性オリゴ糖に関するビフィズス菌との競合性の有無を確認する。本年度樹立したスクリーニング系はこれらの菌においても各菌株間の糖資化能を比較するのに極めて有効な方法であると考えられる。 一方で、ヒト糞便から分離した個人固有のビフィズス菌株の菌種同定および難消化性オリゴ糖の利用能試験を行う。既に静岡県立大学研究倫理審査委員会の承認を受けており、被験者(健康な成人10名程度)を募り、新鮮な糞便を提供していただき、TOSプロピオン酸培地上のビフィズス菌と思われるコロニーを選択し(50菌株/被験者)、HaeⅢを用いたhsp60遺伝子のRFLP解析にて簡易的菌種同定を行い、個人における最優占菌種を決定する。最優占菌の菌株において糖資化性試験を行い、増殖に最も適する難消化性オリゴ糖を探索する。
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Causes of Carryover |
ヒト糞便試料での解析の前段階として、マウスの糞便由来ビフィズス菌分離株のRFLP解析を試みたが、得られたビフィズス菌は非常に少なく、また、同一菌種であった。そのため、研究計画を変更し、対象をラクトバチルス属菌へも広げた。RFLPに用いる制限酵素の選定や制限酵素切断パターンの解析はデータベース上に公開されている遺伝子配列を基にしたin silico解析が主となること、およびラクトバチルス属菌はビフィズス菌とは異なり、好気条件下での操作や培養が可能であることから研究に係る経費が予定より抑えられたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒト糞便試料での解析へ向けて、被験者(10名程度)への謝金(5,000円/名)や被験者より50菌株ずつビフィズス菌を分離し、hsp60遺伝子をPCRにて増幅するため、サーマルサイクラーの1台の増設を予定している。また、ヒト糞便からの分離株間での比較や市販のプロバイオティクス菌株との区別に、パルスフィールドゲル電気泳動法での核型比較解析を行う必要性が考えられるため、パワーサプライなどの装置および試薬類をそれぞれ設備備品費、遺伝子解析用消耗品費として使用する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Molecular and Serological Survey of Rickettsiales Bacteria in Wild Sika Deer (Cervus nippon nippon) in Shizuoka Prefecture, Japan: High Prevalence of Anaplasma Species.2015
Author(s)
Wu, D., Wuritu, Yoshikawa, Y., Gaowa, Kawamori, F., Ikegaya, A., Ohtake, M., Ohashi, M., Shimada, M., Takada, A., Iwai, K. and Ohashi, N.
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Journal Title
Japanese Journal of Infectious Diseases
Volume: 68
Pages: 434-437
DOI
Peer Reviewed
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