2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12363
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
山中 健太郎 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (90359662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 久美子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (80155291)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 運動スキル / コーディネーション / 運動学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の一般家庭で行われる様々な調理動作を、動作の力学的特性および筋活動等の生理学的特性の両面から詳細に記録・分析するというバイオメカニクス的手法で研究し、その中で熟練者と未熟練者の比較から調理動作の「コツ」について検討することを目的とするものである。平成28年度においては、平成27年度に引き続き、対象動作を「包丁を用いたりんご1個丸ごとの皮むき」として、熟練者と未熟練者を比較する調理技術の評価指標に基づいて分類した被験者間で動作の違いについて検討し、さらに動作を生み出す筋活動の違いについても、包丁を持つ利き手だけではなく、りんごを持つ非利き手の活動も含めて検討した。その結果、熟練者の動作は、包丁を持つ利き手がほぼ固定されている一方でりんごを持つ非利き手がリンゴをゆっくり弧を描いて回転させ、ある程度進めたらわずかに手を離して持ちかえることを繰り返していた。筋活動もそれに合わせて行われ、右手の筋群はリズミカルに活動し、左手は継続的な弱い活動とりんごを持ち直す活動が繰り返されていた。すなわち、右手と左手の規則的な連動が認められた。一方、非熟練者では右手はわずかに不規則に動き、左手はきれいな弧は描かなかった。すなわち、無意識に動かしている左手の動きに熟練者と未熟練者の顕著な違いがみられた。 これらの平成28年度に得られた知見は、調理動作の「コツ」を検討する上できわめて重要なものであった。またこれを調理動作のスキルの学習の補助に用いることが、日本の一般家庭で行われる調理動作という技能の伝達をより円滑にする一助となるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者・研究分担者ともに平成28年度に予定していた実験及びデータの解析を精力的にすすめたが、勤務先の大学における新学科設立に関係する業務多忙と、年度末の研究室移動により研究遂行のための十分な時間と場所ができなかった。そのため、当初の計画のような、他の調理動作についての検討や、他の生理指標の計測ができなかった。それゆえ、研究期間を1年延長し、対象とする調理動作を増やし、計測する生理指標として脳波計測などを用いながら、調理動作の「コツ」をさらに明らかにしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、研究代表者・研究分担者ともにこれまでの研究のまとめ作業として、より詳細なリンゴの皮むき動作のデータ取得をまず行う。とくに、調理技術の極めて高い熟練者のデータを取得してその特性を明らかにすることを行う。その際、計測する生理指標として筋電図に加えて脳波の計測も行う。次に、対象とする調理動作を他の調理動作にも広げ、様々な動作に共通する「コツ」についても検討する。最後に、研究代表者・研究分担者ともに平成28年度までに行った研究成果をまとめ、国内学会・国際学会での発表、および論文の投稿に特に精力を傾けて取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
モーションキャプチャーによる動作分析と生体アンプによる筋電図測定により、りんごの皮向き動作の計測を続けてきた。しかし、平成28年度は研究代表者・研究分担者ともに、学内の新学科設立による業務多忙と、年度末の研究室移動により研究遂行のための十分な時間と場所が確保できなかった。この状況で年度内に無理して測定を行い研究を終了させるのではなく、平成29年度に研究期間を延長し研究成果の発表を含めて行うべきと考えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度も継続してリンゴの皮向き動作の計測を行うため、おもに消耗品としての物品費や、被験者の謝礼品にかかる経費などとして用いる。また、他の調理動作や生理指標の計測も行う予定であるため、それらの消耗品としての物品費も必要になる。また研究成果の発表を精力的に行うため、学会参加のための旅費や、論文の校正謝金、論文投稿料なども必要になる。
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