2015 Fiscal Year Research-status Report
倫理観育成とノンテクニカルスキル教育に着目した外科実習プログラムの構築と評価
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15K12367
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
壹岐 裕子 東北大学, 大学病院, 技術職員 (40747614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末田 輝子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術職員 (20748446)
工藤 克昌 東北大学, 大学病院, 助教 (30607768)
野田 雅史 東北大学, 大学病院, 講師 (70400356)
兼平 雅彦 東北大学, 大学病院, 助教 (90374941) [Withdrawn]
福地 純一郎 学習院大学, 経済学部, 教授 (00274043)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医学教育 / 外科手技 / 初期研修医 / Visual Analog Scale / 評価方法 / 動物福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スパイラルアップ可能なトレーニングカリキュラムの構築と評価法の確立と、Wet Labの有効性の検証に有る。そのため、1年目の目標としては、①教育実習アンケートによる解析評価、②ブタの福祉的飼育に関する科学的根拠の探索、③non-technical skillsの教授法の確立の3点を軸として、本研究課題実施中に成果を得るための初年度に当たる。 東北大学病院先端医療技術トレーニングセンターで開催された「初期研修医対象のブタを用いた外科手技トレーニング」と、胃腸外科で開催される若手医師対象の「外科手技トレーニング」において、technical skills(手術手技)、non-technical skills(手術室で安全にオペする基盤となる技術)さらにnon-technical skills(倫理観)に関する調査を受講生に対し行った。その際、データ収集に関し既存の調査スケールでは感度が不十分である事を確認し、調査スケールの開拓を行う事となった。新規導入されるスケールは、医学分野で用いられている痛みを測定するためのスケールである、Visual Analog Scale(VAS)であるが、データの有効性の検証を行う必要性がまずはあると考え、スケールそのものの解析を今年度は行っている。現在のデータにおいては、VASの有効性が当研究においてのVASの使用方法にて内在する固有誤差の外に見られ、外科手技のデータにおいては、トレーニングの前後においての有効性の測定が可能である、という結論に至っている。この結論は、スケールの有効性についての結論であるが、また、外科手技トレーニングに関する有効性を示すことにもなり、Wet Labの存在意義を公表出来る結果であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当課題の目的である、Wet Labの有効性を示す、という事に関しては、十二分な進展を得られる結果となった。また、それを示すために調査スケールの開拓を行い、その有効性を示し得たのは当課題の副産物である。 Wet Labの有効性については、外科手技に関する調査項目において有効性を示すので十二分であるが、当大学の特徴とする動物倫理・福祉に重きを置いたトレーニングの効果を測定するには、別の調査方法が適すると判断された。また、non-technical skills(手術室で安全にオペする基盤となる技術)の学習方法を考案するためには、初期研修医、若手医師らと熟練した医師達の意識・技術の比較を行う必要があり、初年度行った調査では比較検証が可能なデータが集まりつつある。 効果的なトレーニングカリキュラムを構築するためには、現在行っている横断研究は縦断研究に移行する必要があると考えている。当初縦断研究に移行するためのツールとして、当大学病院ICUで採用されていたSBARを活用する予定であったが、初年度トレーニングのリピーターに対し、SBARを活用したフィードバックシステムを構築しようとしたところ、看護領域で広く使用されているSBARを初期研修医に対し用いるのは何らかの変更が必要であると考えられた。そのため、SBARの使用は現在は取りやめている。 福祉的飼育がトレーニングにおいて有益である事を示す科学的根拠を得る為の実験に関しては、今年度は情報収集が主な段階で有る。この分野に関しては、上記の医学教育に関する内容のある程度の収束がなされてから本格的に稼働すべき内容であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Wet Labの有効性に関し、調査スケールのVASの有効性と合わせて論文にて発表を行う。それにより、Wet Labの有効性を公表することに関しては大きな山を越えると考えられる。ただ、医学部での動物の取り扱いを考える上で、国際的世論の流れから動物福祉・倫理観を高める必要があるため、当大学の特徴とする動物倫理・福祉に重きを置いたトレーニングの開催方法が、どのような効果を受講生に及ぼしているかの測定については、VASを使用しない別の調査方法が適すると判断される。倫理・福祉感は、成長過程から育まれ人間の基盤に根付く感覚であるため、数値的な情報の抽出は適さないと考えられる。そのため、分析方法をテキストマイニング、計量テキスト分析に変更する予定である。 また、non-technical skills(手術室で安全にオペする基盤となる技術)の学習方法を考案するために、初期研修医、若手医師らと熟練した医師達の意識・技術の現状での比較検証を行ってきたが、縦断研究に移行する上で、トレーニングのリピーターへのnon-technical面での調査を充実させ、初期研修医期間での、あるいは若手と言われる医師の期間での技術の変遷を確認する必要がある。 効果的なトレーニングカリキュラムを構築するためには、現在行っている横断研究は縦断研究に移行する必要があると考えている。当初縦断研究に移行するためのツールとして、当大学病院ICUで採用されていたSBARを活用する予定であったが、看護領域で広く使用されているSBARを初期研修医に対し用いるのは何らかの変更が必要であると考えられるため、SBARに変更を加えて新しいフォームを考案予定である。
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Causes of Carryover |
今年度において次年度使用額が生じた理由は、当初予定していた福祉的飼育の必要性を科学的論証を行うために予定していた実験系が行われず、Wet Labの検証を主たる研究内容としたため薬品類の購入がないことによる。その分、データ解析用に用いる機器に資金が活用されたが、当初の予定とは小顎の差が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度使用されなかった次年度使用額については、トレーニングを維持するためのブタの購入に充てられる予定である。
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Research Products
(1 results)