2015 Fiscal Year Research-status Report
指紋微生物の有用多様性の創出と科学リテラシー向上のシナジー
Project/Area Number |
15K12369
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
伊藤 司 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80431708)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 指紋微生物 / マイクロバイオーム / 皮膚常在菌 / 脱色 |
Outline of Annual Research Achievements |
「特定の化学物質を常時扱う人の手にはその化学物質を代謝できる微生物が存在し得る」という仮説のもと、指紋微生物が環境汚染の原因となる難分解性化学物質を分解できることを実証することが研究の目的である。そのために次の3つの観点で研究を進めている。 1.指紋微生物の有用性:指紋微生物が難分解性染料を分解できることを示す。染料汚染(染色工場・染料工場の排水)はオイル・パルプに次ぎ世界第三の環境汚染である。 2.有用な指紋微生物の定着性:難分解性染料を分解できる指紋微生物の種同定と機能遺伝子の系統解析を行うことにより、同一人物への指紋微生物の定着性を調査し、染料と常時接触している染色業従事者からの獲得効率が高いことを示す。 3.科学リテラシーの向上:一般の人が研究に協力して共に考えることを本研究を通じて行う。 現在までヒトの手に常在するバクテリアを採取し、その微生物株を用いた染料の脱色実験の方法を確立できた。従来までM9培地で脱色反応を観察していたところを、LB培地を用いることでさらに迅速に結果を得ることができた。また、投入菌量の最適化を行うことで、バクテリアによる染料の脱色反応を効率的に進めることができた。さらに、脱色率を吸光度で定量的に評価する方法も確立できた。 ヒトの手を対象とした染料脱色微生物は、東南アジアからの留学生、染色工場でのキャリアが長い従業員から高い獲得効率で得られた。これらの人々は、一般の日本人学生と比較し、特異な生活習慣や生活環境で暮らしているという特徴があると考えている。現状の結果では、生活習慣の差異がヒトの手に存在するバイオームに変化を与えるということを結論づけるには不十分である。しかし、本研究により、特異な生活習慣の影響を受けて、手に存在するバイオームが変化している可能性を発見できた。また、高い獲得効率で脱色能を有する微生物を獲得できる集団を見つけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
方法を改善し、確立できたこと。 複数の集団に対して実施し、脱色微生物を高確率で得られる集団を見つけることができたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
常在菌叢の形成が未発達と思われる集団(幼児)を対象として実験調査を行うこと。 獲得微生物の遺伝子解析により関係性を明らかにすること。
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Causes of Carryover |
30,527円の次年度使用額が生じたが、消耗品費のキャンペーンディスカウント等によるものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
DNA解析等にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)