2015 Fiscal Year Research-status Report
CO2鋳型を使うロストワックス精密鋳造法による中学校技術・溶融加工教材の実用化
Project/Area Number |
15K12386
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田島 俊造 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40136130)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 溶融加工教材 / ロストワックス鋳造法 / ガス型鋳造法 / 中学校技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度の研究で,教材を前提としたガス鋳型とロストワックス鋳造法の特性について次の通り明らかにしている。 1.ガス型はCO2で硬化する場合に珪酸ソーダ3%,乾燥する場合に珪酸ソーダ1.5%で,実用上十分な強度を有する。 2.ロストワックス鋳造法にガス型を鋳型として採用できる。 3.脱ロウは電子レンジで加熱してロウを溶融,鋳型に吸収することで成立する。 4.Sn-Bi合金は融点が約137℃と低く,鋳造,鋳物用として使用できる。 5.本プロセスでは鋳物の精度が高く表面性状が優秀である。 6.本プロセスでは作品の形状制約がほとんどない。 このように本鋳造プロセスでは,複雑な形状でも良好な鋳物が数時間の作業時間で得られる。特に教材において最も扱いにくい脱ロウ工程において,電子レンジによる加熱でロウを溶かして鋳型に吸収させるという新しい概念を示し,この手法で通常の脱ロウ工程と同等の状況が得られることを明らかにしている。この成果によりガス型を用いるロストワックス鋳造法とSn-Bi合金の組み合わせは教材としての適応性が高いことを明らかにしている。仕上げを除く鋳造工程の正味製作時間は2時間程度であり,中学校技術の授業時数3コマで実践できると考えられる。 そこで,27年度では附属中学校において120名を対象に授業実践して教材化における問題点を検討している。50分×3コマで実践できることを確認したほか,アンケート結果では,金属加工法へ興味関心や溶融加工法に対する理解度などについて良い結果を得ている。 実践中に明らかになった問題点は,鋳型の固化時間および強度がばらつくこと,さらに鋳型強度が高すぎて型ばらしが困難になることがある,という2点であった。既に教材として十分な内容であるが,今後はこれらの問題点を解決して,更に扱い易い教材として確立する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
27年度における研究で鋳造法の詳細な手順として次の通り確立している。 ①ロウ模型の製作/ロウを手のひらで暖め,軟化させて成形する。3次元的な自由成形が可能である。 ②けい砂と珪酸ソーダの混合/シール付きポリ袋に珪砂,水および珪酸ソーダを入れて密封し,外側から5min攪拌混合してガス型用の鋳物砂を得る。 ③造型/紙コップの中にロウ模型と鋳物砂を入れて鋳型を製作する。全方向の「模型の周囲の砂の厚さ(砂付き)」が10mm以上になるように注意して,できるだけ固く砂を突き固める。 ④鋳型の硬化/CO2ガスで硬化する場合は,紙コップに入れたままで鋳型上部にガスを吹き付け固化する。乾燥する場合は,紙コップにいれたままで1週間程度放置する。 ⑤脱ロウ/電子レンジに入れて加熱する。鋳型数で処理時間が変わるので,状況に応じて時間を設定する(500W・1個で2min)。 ⑥溶解/マグカップなどのステンレス容器をガスコンロ上に設置する。ここにBi-Sn合金(融点138℃)を入れて加熱する。完全に溶けてから10sec加熱して過熱温度30℃ほどで鋳込み工程に移る。 ⑦鋳込み/鋳型を珪砂上に置き,湯口を水平に固定して,鋳込みを行う。 ⑧冷却・解枠/鋳型全体が常温に下がったら鋳型をポリ袋に密閉して,外側からプラスチックハンマー等で壊し鋳物を取り出す。 ⑩仕上げ加工/鋳物は不要部分を弓のこなで取り除いてから,やすり,紙やすりなどで仕上げる。 以上を基に中学校技術の授業で3年生120名を対象に実践できている。手順を確立するだけでなく既に3クラスにおける実践まで進めることができており「当初の計画通り~計画以上に」進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度では基本的な問題を解決して,ロストワックス鋳造の鋳型にガス型を用いる方法を確立,これを既に附属中学校で実践している。今年度においても,附属中学校の協力を得て3年生120名を対象に実践する予定となっており,27年度の実践で明らかになった問題点を解決したプロセスでのぞむ予定である。実践では,三大加工法(溶融加工,塑性加工,除去加工)による金属加工法を概説し,加工分野における溶融加工法の立ち位置を説明して,金属加工全般の知識が整理できるような内容にして授業内容のレベルを上げる(負荷をかける)予定である。 問題点として明らかになっているガス型の安定した硬化については,授業実践では1週間以内の固化で十分なこと,および中学校では扱いにくかった二酸化炭素高圧ボンベを用いないこと,などを前提に自然乾燥で行うことにしている。鋳型の乾燥は風通しなど周囲の環境が整えば1~2日間で可能なので,鋳型の放置方法や紙コップ鋳枠の通気性の改善などで対応する予定でいる。この方法でも問題が残る場合は,鋳型に硬化剤のFe-Siを加えて数時間で発熱・硬化するNプロセスを採用する予定である。 型ばらし時における鋳型強度が高すぎることは,鋳造の生産現場では注湯時における鋳型強度が優先されてあまり問題になっていない(ガス型において)ため考慮が遅れた問題点である。これは既に4月期における実験で鋳型強度を1MPa程度に管理できれば,造型時のハンドリングが可能で,かつ,型ばらし時の崩壊性が改善されることを把握できている。そこで,鋳型に添加する水ガラスの量および水分量の最適値を明らかにして,6月に予定している中学校実践授業に間に合わせる予定である。 これらの問題点を解決した上で実践におけるアンケート結果を踏まえ,今年中にも教材メーカーに詳細なノウハウを伝えて教材として販売して頂くよう提案する予定である。
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