2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12390
|
Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 克治 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10284449)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 毅 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (40346838)
長澤 五十六 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (40302351)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 粒子 / 実験 / 三次元教材 / 3Dプリンター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も当初計画に従って、巨視的な実験・観察の後に効果的に導入できる三次元教材の開発を行った。 昨年度にα-D-グルコースをモデルとして、熱溶融造形法(FDM)タイプと光造形法(SLA)タイプの3Dプリンターによる分子模型の製作方法を確立したので、本年度は、FDM法によって水分子を作成し、実際の授業での実践を行うことにした。昨年度に得られた加工条件を基にして、条件を変えながら水分子の空間充填モデルの製作を検討したところ、直径1.75mmのABS樹脂を用いた場合、内部充填密度10%、レイヤ高さ0.3の条件下であれば、製作可能であることが明らかとなり、この方法で50体を製作した。また、コストを試算した結果、1体製作するために必要となるABS樹脂が約3.42mであることから、1体あたり約43円となることが明らかとなった。なお、加工時間は、1体あたり約44分30秒であった。 得られた分子模型を用いて、研究協力校の中学校で、第一学年理科の「水の状態変化」での実践を行った。水が氷になると体積が増える理由について、製作した水の分子模型を見ながら生徒にまとめさせた。その結果、96%の生徒が水の粒子の並び方を体積変化と関連付けてまとめることができた。 一方、高等教育向けの特異な立体化学の3次元教材モデルとして有用であると考えられる、一次元鎖状構造を有するパラジウム錯体の合成に取り組んだ。その結果、塩素が架橋配位した混合原子価一次元パラジウム錯体の合成、さらに、本化合物の単結晶X線構造解析に成功した。今後、単結晶X線構造解析の解析精度を高める必要があるが、3Dプリンター出力のためのSTLファイルを作成する準備が整った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要欄に記載した通り、当初計画に沿って教材開発を行うことができた。 特に、本年度は実際に製作した水分子の空間充填モデルを使って、中学校での授業実践まで行うことができた。また、高等教育における三次元教材開発につなげるためのモデル触媒として、塩素が架橋配位した混合原子価一次元パラジウム錯体の合成とX線構造解析をおこなった。高等教育における実践までは至っていないものの、実際の実践で用いる予定となっている新規錯体の合成とX線構造解析まで終わらせ、あとは3Dプリンターによる出力までできれば、すぐに実践可能な段階まできている。 以上のことから,本研究は「おおむね順調に進行している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までの基礎研究で開発した有機分子触媒や金属錯体の教材化について検討を行うとともに、本年度に引き続き、教材化が必要であると判断された分子モデルを、熱溶融造形法(FDM)タイプと光造形法(SLA)タイプの3Dプリンターを用いて製作することを主な目標とする。 分子模型製作においては、特に、SLAタイプの3Dプリンターで、教材に適した分子モデルを球棒モデルとして製作する際の最適な加工条件や、コストや加工時間を検証して最適化を図る。これまでの研究で、水やグルコースのように比較的単純な分子については製作方法を確立できたので、今後は、比較的複雑な分子を対象として製作を行い、従来から用いられている分子模型(市販の組み立て式の球棒モデルや空間充填モデル)に対する優位性を明らかにしていく。 三次元教材開発を指向した基礎研究においては、まず、混合原子価一次元パラジウム錯体の単結晶X線構造解析について、錯体調製を再検討しながら、解析精度を高める検討を行う。また、教材化を狙う有機化合物について、天然からの抽出や合成などの検討を行い、大学や中学校・高等学校での化学実験への導入について検討を行う。 これらの基礎研究で開発した金属錯体や有機化合物のSTLファイルを作成し、三次元立体モデル教材の製作を行う。そして、これらのモデルを用いて、大学における構造化学的教育方法を模索し、効果的な教育プログラムの実施を試みる。また、初等中等教育現場での活用を念頭に、三次元立体モデル教材の活用方法を検討し、効果的な教育プログラムの構築と実施を試みる。さらに、小中学校教員を対象とした教員研修や研究会において、これらの教材を取り入れた実験について意見交換を行い、教育現場で活用しやすい教材となるように改善をしていく。 なお、本研究は概ね順調に進行していることから、研究計画の変更は予定しておらず、遂行上の課題もない。
|
Causes of Carryover |
本年度の分子模型製作は小分子であったため、3Dプリンターで必要となる消耗品代が少なかった。また、基礎研究で一定の進展が見られた後に、中学校での実践を行ったため、当初予定よりも教材開発用の経費が少なく抑えられた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は三次元教材の開発につながる基礎研究として様々な合成実験を行うとともに、開発した教材を用いた実践を行う予定であり、当初予定の研究費と繰り越した研究費を合わせて使用する計画である。 具体的には、薬品代、ガラス器具代、実験器具代の実験消耗品代に多くを使用する予定である。これに加えて、成果発表のための出張旅費を計上している。
|
Research Products
(3 results)