2015 Fiscal Year Research-status Report
初中等教育における放射線計測実験の定量化・精密化とその教育効果の研究
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15K12393
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
足利 裕人 公立鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (00612342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 和道 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (00134403)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線 / 教材 / 半減期 / 計測 / ベータ線 |
Outline of Annual Research Achievements |
高感度の3インチNaIシンチレーターにより,身近に存在する温泉水等の低線量の試料を用いて,半減期を正確に求める教材を開発した.「温泉水を用いた鉛214の半減期の教材化」では,三朝の温泉水に含まれるラドン222を気中に追い出し,活性炭に吸着させ,放射平衡後に加熱して,残った鉛214とビスマス214のガンマ線スペクトルを計測した.連続する10分間ごとのガンマ線のピーク強度変化より,半減期を計算する方法を開発した.従来鉛214だけの半減期の測定には,化学的処理によるビスマス214との分離が必要とされたが,その難点を克服することができた.また,鉛214の半減期は中等学校の授業の50分の約半分程であり,授業時間内に測定し,計算することができる.実験教材として霧箱しかなかった原子分野に,新たな実験を追加することができた.. また,並行して「アミノ酸の吸収スペクトルを利用したベータ線線量計測の試み」の研究を開始した.アラニンの放射線分解反応による反応生成物が比較的安定であることを利用し,アラニン線量計が実用化されている.これにヒントを得て,アラニンの赤外線吸収スペクトルがベータ線照射によってどの程度変化するかを調べた.厚さ1μm程度のアラニン薄膜に学生実験用ストロンチウム90線源からのベータ線を約43日間照射し,赤外吸収スペクトルの変化を調べた.その結果,1307 cm-1吸収線の強度が約10%減少したことが見出された.この現象がベータ線照射によるものか経時変化によるものかはまだ明らかではない.放射線を照射しない参照試料との比較を行っていく必要があると結論した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3インチNaIシンチレーターの特性試験を繰り返し,ガンマ線スペクトルが正確に表示されるよう改造方法を発見した.また,高線量の試料では数え落としがあり,低線量すぎるとノイズの影響が出るため.適切な線量の範囲を求めた.島根の池田鉱泉の高線量試料での実験も行い,中等学校での教材化のめどが立っている.アラニンを用いたベータ線線量計は画期的なアイデアであり,追試を繰り返している.
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Strategy for Future Research Activity |
鉛214の半減期の精密測定はほぼ実現できており,ビスマス214の半減期の計算方法の確立を行う必要がある.また,3インチNaIシンチレーターの波形のひずみを完全に除去する必要がある. さらに,新規にベータ線を強い磁界で曲げ,磁界の無いときのエネルギー分布との差より,ベータ線のエネルギー分布を求める手法を開発する計画である.
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Causes of Carryover |
設備備品費において,初年度にガイガー計数管,デジタルオシロ,マルチチャンネルアナライザーを購入せず,旧製品で動作試験を行ったためである.試験を繰り返し,最も適切な機器を購入する予定である.また,旅費については,初年度は学会発表を1つにしぼったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験の進捗状況に伴い,随時適切な機器を購入し,計測システモを構築する予定である.研究の成果に応じ,学会発表旅費を使用していく予定である.
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