Outline of Annual Research Achievements |
人とロボットの関係を探る研究の中で,ロボットの挙動が人にどう影響し,どう受け取られるかに関し,アンケート紙による調査方法に加え,客観的数値による評価手法を導入し,以下の2研究を進めた。 1) 簡単な"矢印合わせ対戦ゲーム"において,"人対コンピュータ(PC)の場合に比べ,対人の場合の方が,対戦者が打つ手のエントロピー(情報量)が増加する"という先行研究を基に,上記に加えて"人対ロボット"の場合は対戦者の打つ手にどのような傾向が現れるかを知るため,対戦相手としてPepperを加え実験を行った。結果は,上記3者を対戦相手とした場合,被験者の打つ手のエントロピー値に有意な差が認められなかった。先行研究結果と違いが生じた理由は,実験環境の違いも考えられるが,人とPCの間にPepperを加えたことで,対戦相手が,Pepperを人と同等と認識し,さらにPCとPepperを同等と認識したことによる影響の可能性も考えられる。有意差が無い3ケースのエントロピー値が,先行研究の「対人」の場合のエントロピー値に近い値であることからもその可能性が示唆された。 2) Pepperに,簡単な看護師の業務「入院の案内」の説明をさせた場合、本物の看護師の説明と比較し,説明を受けた各被験者の説明内容についての記憶に差が生じるか否かについて実験を行った。被験者は2クラスの看護専門学校生を対象に,収録映像による実験とし,説明内容についての記憶テスト,漢字呈示記憶テスト,説明者に関するアンケート紙調査を行った。結果として,Pepperによる説明に比べ,本物の看護師による説明の場合の方が内容の記憶テストの成績が有意に高いことが示された。アンケート紙を元にした解析からは,Pepperの場合には,話の内容に対する集中度が低下することや,言われたことを守ろうという思いが低下することによる影響がその要因である可能性が示された。
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