2015 Fiscal Year Research-status Report
概念モデルを具体化するプロセスを対象とした「作ることによる学習」の支援手法の考案
Project/Area Number |
15K12426
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小島 一晃 帝京大学, 理工学部, 助教 (30437082)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 作ることによる学習 / 認知モデル / 例からの学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
「作ること」は対象を理解するための有効な活動であり,学習者自身に何かしらの生成活動を行わせる「作ることによる学習」の支援は多くの研究で行われている.ただし,作ることは高度な専門的スキルが必要であるため,初学者には困難である.多くの支援では,対象を抽象的なレベルで記述する「概念モデルの設計」のみを学習者の課題とし,それを実際に形あるものとして作り上げること,すなわち概念モデルを具体化することは対象としていない.しかし,作ることを通じた対象理解においては,概念モデルを具体化することでフィードバックを受け取ることが,その中心的な課題となる.本研究では認知科学の分野において,計算機モデルの構築による人間の思考の理解を対象として,与えられた概念モデルを具体化する課題の設計と支援手法の考案を行い,作ることによる学習の支援の拡張を試みた. 本研究では,人間の認知の計算機モデルを実装する基盤としてプロダクションシステムを採用し,概念モデルを具体化するプロセスを学習者に体験させる学習支援システムを試作した.本システムは,人間の思考過程の概念モデルと,その思考を計算機に実行させるように具体化された計算機モデルを例として使用する.システムは例の計算機モデルを実行してその実行過程を抽出し,学習者に提示する.学習者は実行過程の各ステップでどのような心的操作が行われるかを考え,ルールとして記述してゆくことで,計算機モデルを実装する.このように例の具体化を追従する手続きにより,専門的なスキルを持たない学習者でも,人間の思考のモデルを具体化する課題を通じた学習に成功することが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,学習者に計算機モデルを構築させることで人間の思考を理解させることを目的として,学習者に概念モデルを与え,それを計算機モデルとして具体化させる課題を設計した.そして,この課題を実施するための計算機システムを試作した. 当初計画では,課題を設計したのち,この課題を遂行することによる学習効果を実験的に検証する予定であった.しかし,例題をオーサリングしたり,学習者が例題を見てモデルを具体化することを支援する計算機システムがなければ,課題の実施自体が困難であることが判明した.そのため,当初計画の順序を変更し,先に支援システムを試作した.そのため,実験検証の実施が平成27年度から平成28年度に送られることになった.しかし,研究計画全体としては,期間内に当初計画を遂行することが可能な進捗となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に設計した課題の学習効果を,試作した支援システムを用いて実験的に検証する.課題の例題には,筆算の引き算を用いる.人間が筆算の引き算を行う思考過程の計算機モデルは先行研究において使用された例がある[1,2]ため,これを例題のモデルとして採用する. 実験検証ののちは,支援システムの改良も行う.モデルの具体化を行うことの意義は,モデルの動作を通じたフィードバックを受けることにあるため,より効果的なフィードバックを学習者に与える方法についても,実験検証において検討する.また,教員による例題のオーサリングの手法についても検討し,試作した支援システムを実用化するための知見を得る. [1] Brown, J. S. and Burton, R. R.: Diagnostic Models for Procedural Bugs in Basic Mathematical Skills, Cognitive Science, Vol. 2, No. 2, pp. 155-192 (1978) [2] 神崎奈奈, 三輪和久, 寺井仁, 小島一晃, 中池竜一, 森田純哉, 齋藤ひとみ: 認知モデル作成による認知情報処理の理解を促す大学授業の実践と評価, 人工知能学会論文誌, Vol. 30, No. 3, pp. 536-546 (2015)
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Causes of Carryover |
平成27年度は課題の設計と実験検証を行い,その成果を発表する予定であった.しかし,計画を変更して支援システムの試作を先に行ったため,実験検証は先送りとなった.このため,今年度の段階では発表するべき知見がまだ収集できてない.このことから,実験検証における人件費と,発表のための旅費が未使用のまま残っている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には,先送りとなった実験検証を実施し,その成果を発表する.その際の人件費と旅費として使用する.
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