2017 Fiscal Year Annual Research Report
Toward a modern interpretation of emergence concept
Project/Area Number |
15K12433
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40154075)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 生命概念 / 創発 / メカニスム / 生物学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命が示す創発性をどのように理解すべきか,という生命基礎論の重要課題に対して,これまでにないアプローチで臨むことを本研究 の主要テーマとしている。本年度はこれまでの2年間の研究に引き続き,文献データベースの整理と分子生物学の発展における創発の扱い,さらに広く 生物科学の歴史における創発的概念の扱われ方などを検討した。 1.昨年度に開発したBaseXを用いた生命科学文献データベースを利用し,さらにRソフトを用いて統計解析を行った。1965年から2014年までの生命関連の主要雑誌32誌を対象として,そのタイトルと要旨について,各年次での出現頻度の高い100単語をすべて集め,重複を除き,タイトルで226語,要旨で213語を選んだ。これらの単語について,各年次における出現比率の推移についてクラスタリング解析を行った。その結果,出現頻度が著しく減少する第1グループ,ほぼ一定の第2グループ,著しく増加する第3グループのクラスタを同定した。また,タイトルと要旨での出現頻度は相関している場合が多かったが,必ずしも同じではなかった。この結果については,現在さらに精査中であるが,この結果に基づいて,現代生命科学が1990年付近で区分できることが推定された。 2.第1グループには,具体的な生物名の他,クロマトグラフィーやゲル電気泳動など,当時最新の手法名が含まれる。第3グループには,パスウェイ,ネットワークなど制御に関わるもの,進化,結晶化など,新たなトピックに関連するものが含まれるが,機能,役割などの言葉も目立つ。実験技術に中心をおいた初期の研究から,生物の創発的な特徴に注目した研究へと移り変わっていることがわかる。 3.生命哲学・生命科学史に関連して,細胞内共生説の歴史や生命を宿した物質に関する考察を行い,これらに関する図書『創発の生命学』を刊行した。『細胞内共生説の謎』も近々刊行される。
|