2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K12434
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 章子 名古屋大学, 国際機構(国言), 特任講師 (50390703)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医学史 / 科学史 / 軍事史 / 博物館学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は国立衛生医学博物館(National Museum of Health and Medicine)が1880年~1945年までに取得した収蔵品について、現地調査を行った。具体的な調査作業としては、 1)1945年以前のプロセス・レコードを閲覧して、その中から日本に関連するものを抜きだす、2)その所蔵品の写真が既にデジタル化されていれば写真にて確認、デジタル化されてなければ現物の確認を行う(この際、写真撮影も平行して行いデジタル化も進める)、3)アーカイブス資料と照らし合わせ、取得経路などを調査する、4)調査で得られた新たな情報をプロセスレコードに書き加える。 これまでに約80点の確認が終わり、写真のデジタル化作業も同館担当者によって順次行われている。 今年度調査した収蔵品の多くが旧帝国陸軍および海軍(一部日露戦争時も含む)が使用した医療器具や医薬品だった。医療器具はそのまま現物が残されていたが、医薬品についてはArmed Forced Institute of Pathologyが分析後破棄しており、その分析結果とパッケージのみが同館で保存されていた。多くの所蔵品が、米陸軍から同館へ一括で引き渡されていたために、同館の資料だけでは具体的な取得経路(米軍が日本においてどのように収集をおこなったのか)が不明だった。この点については追加の調査が必要である。 また同館担当者から、シカゴにある分館にも日本関連の所蔵品がある可能性を指摘されたために、当初計画のなかったシカゴ分館における調査も追加した。シカゴ分館においても日本関連の所蔵品が確認できたが、残念ながら本研究が対象とする年代には該当するものではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
米国・国立衛生医学博物館は米国陸軍の施設であり、基地内に作られている。そのため一般展示ブースへの立ち入りは誰でも自由に行われるが、いわゆる「behind the scene」に入るためには、陸軍より訪問許可を得る必要がある。米軍は2016年に、外国人の軍事施設内の立ち入り許可取得手続きをこれまで以上に厳格化した。政府関係者ではなく、かつ公的訪問(official visit)でもない場合の申請手続きがこれまで以上に複雑化し、今回の調査のために訪問許可を得るのに3か月も要する結果となった。またこちらの希望通りの日程で許可が下りなかったこともあり、計画通りの調査が行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前年度調査(1880年~1945年の収集品)で確認できた所蔵品のうち、入手経路が不確定なものについて引き続き資料調査を行う。こちらについては同館のアーカイブス担当者が主に行ってくれている。日本でも文献調査を随時行う。 次に今年度の現地調査では調査対象を1960年までに広げる。前回調査で、1950年に米軍から同館に大量の収集品の譲渡が行われたことが分かったので、この中にも日本関連の所蔵品が多数含まれると推測している。また、原爆関連の調査資料の一部がArmed Forced Institute of Pathologyから同館へ移されのも1950年代であるので、今年度は原爆関連の所蔵品についても順次調査を進める。 また同館担当者からの聞き取りにより、ベトナム戦争時の陸軍収集品にも多くの日本関連の所蔵品が含まれていることが分かった。戦争中ベトナム軍が医薬品や医療器具の多くを日本から調達しており、それらを米軍がベトナムにて接収したようである。これについても時間の許す限り調査をおこないたい。 最後に、同館担当者と協力して、日本関連所蔵品の目録作りを行う。これまでの調査した1880年-1945年の分については、写真を添付したデータのとりまとめ作業を順次行っている。この目録を同館のHP上に掲載するよう、同館関係者と協議および掲載許諾についての手続きを進める。
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