2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K12434
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 章子 名古屋大学, 国際機構, 特任准教授 (50390703)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医学史 / 薬学史 / 軍事史 / 科学史 / 博物館学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年3月に米国・国立衛生医学博物館(NMHM)において日本関連収集品の現地調査を行った。今回の訪問で約120点の現物を確認することができ、同館が所蔵する戦前~占領期にかけての日本関連収集品のうち最大のカテゴリーであるPharmaceutical(主に処方薬、市販薬などの医薬品)とSurgical kitsの調査がほぼ終了した。また所蔵点数として数は多くはないものの、歴史的資料価値の高いanatomical models(主に病巣標本)の調査も行った。こちらのカテゴリーについては同館によってこれまでヨーロッパ人作家による作品だと考えられていた男性性器の罹患部のモデルが、日本人・長安周一の作品であることが判明するなど、大きな収穫があった。
最大カテゴリーであるPharmaceutical調査が終わったことから、戦前~占領期の米国・陸海軍による収集・調査の方針についても検討を始めた。同館には旧敵国であるドイツおよびイタリア関連の収集品も多くあるが、中でも日本関連の医薬品は群を抜いて多い。日本から収集された医薬品については、日本から持ち帰った後に米陸軍の研究機関で詳細な調査が行われているケースが多いことから、関連資料の分析を進めることにした。
さらに、今回の調査から現物確認にあわせて、同館専門スタッフによって所蔵品一点一点について写真撮影が行われることとなった。写真撮影には莫大な時間が要するため、今後も同館担当者が随時行うことになっている。同館担当者の協力を得て撮影作業を行うことで、本研究で作成予定のデータベースに文字情報だけではなく画像を掲載する目途がついた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
NHMHは米国陸軍の施設であるため、外国人の研究利用には一定の制限が設けられている。また調査訪問には事前の申請が必要であるが、申請の承認に長い時間がかかることが多い(申請は在米日本大使館を通じて、米国・国防省あてに提出する)。本研究開始当初からこちらの希望した通りに調査訪問が行えないことが続いたが、今年度も2度予定していた調査が1度のみしか行えなかった。本研究は同館収集品の現物調査が基本となっているために、予定通りに現地調査が行えないのは、研究の進捗に大きな後れをもたらす。そのため本年度が研究の最終年度であったが、来年度まで研究機関を延長せざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体の進捗状況としては遅れが生じているものの、その一方で毎回の現地調査そのものは順調に進んでいる。これはNMHMのスタッフが本研究に大変協力的であることによるところが大きい。これまで行った同館のプロセス・レコードの調査から、残る現物確認の必要な取集品は200点余りだと推測している。今年度で最も大きなカテゴリーについて作業が終わったので、次回調査からは獣医学関連、義肢装具、携行医療器具などのそれぞれの点数が多くないカテゴリーに取り掛かる予定である。 またこれまでに調査を終えた収集品についてデータの整理、画像データの処理および日英の翻訳作業を随時進める。データベースの試作版はほぼ完成しているので、今後同館においてデータベースの公開方法について検討をしてもらう予定である。 さらに、最大規模の収集品である日本関連の医薬品について、当時の米陸海軍の収集方針や調査状況などを取りまとめ、同館担当者とともにアメリカ医学史学会で研究報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
調査対象機関からの承認が遅れ、予定していた海外調査が行えなかった。研究期間を1年間延長し、次年度に海外調査を実施する予定である。
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