2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of early stages of plant illustration in Japan
Project/Area Number |
15K12437
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
長田 敏行 法政大学, 名誉教授 (10012519)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物画 / 加藤竹斎 / 狩野派絵師 / P. F. シーボルト / E. サトウ / 川原慶賀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1878年に加藤竹斎により制作されたことは分かっているが、保存場所においてその制作の意図も過程も全く不明とされてきた、材の上に描かれた植物画の意義と成立の系譜を探るために行われた。前年度までに、制作の経緯はほぼ明らかになり、日本での植物画法成立過程とはやや異なっていることを示してきた。今年度はその背景となる思想的背景も追跡し、日本への洋画手法導入の流れとどのような関係にあるかを明らかになるようにすることを行った。 新たに明らかになった事実としては、加藤竹斎は画法に関する著書「丹青秘録」があり、国立国会図書館のデータベースにあることからその通読を試みた。法政大学根崎光男教授の助力を得ながら読み進んだところ、この本は加藤竹斎の画法の手技書であると同時に画法の精神にも敷衍した書であることが判明した。膠を用いて、鉱物性染料を薄く広げることにより、成立後135年しても変色のない図であり、通常の洋画の手法とは異なっており、伝統的な狩野派絵師であるとともに、モチーフは洋画的、植物画的手法も取り入れたユニークなものであることが示された。一方、イギリスの外交官サトウ(Ernest Satow)は多くの日本研究に関する論文を残しているが、その中に群馬県の古墳の発掘の論文があることが知られている。その論文中の記名のない図が実は加藤竹斎のものであることをサトウの日記と参照することで明らかにすることができた。 その結果、ハーバート大学蔵のキリの図から加藤竹斎とシーボルト(P.F. von Siebold)の「日本植物誌」との直接的関連が示され、その図の元となった川原慶賀の図から、加藤竹斎の系譜はこの流れにあることが明らかとなった。一方、日本における洋画の系譜は、平賀源内、司馬江漢、小野田直武、渡辺崋山の系譜は教科書的に示されているが、これらとは独立な系譜であることが新たに示された。
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