2015 Fiscal Year Research-status Report
持続的観光への展開を目指した協働型登山道維持管理プラットフォームの構築
Project/Area Number |
15K12451
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邉 悌二 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (40240501)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 観光地理学 / 持続的観光 / 国立公園管理 / 登山道荒廃 / 大雪山国立公園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,山岳国立公園における協働型登山道維持管理に関わる問題点の解明とその解決への方策を探り,持続的な協働型登山道維持管理のプラットフォームを構築することを目的とするもので,初年度には以下の調査を行った。 冬期の旅行者(国内および海外からの旅行者)200名以上に対して,層雲峡および然別湖において,登山道に関する「大雪山グレード」やジオパーク(期待するジオ資源)に関するアンケート調査を行った。協働型登山道維持管理に関わるステークホルダー6名から聞き取り調査を行った。また,大雪山国立公園において,地上写真ならびにUAV(無人自立飛行機)を用いた登山道の3次元荒廃調査法の開発に関する調査を行った。地上写真による登山道の3次元荒廃調査方法に関しては,写真撮影法とその解析のマニュアルを作成した。環境省管理官と将来のデータベース作成に関する情報交換を行い,春・秋に大雪山国立公園関係1市9町で実施される「登山道維持管理意見交換会」に出席し,「共同型登山道管理データベース」構築に向けた調査の説明を行った。近年大雪山国立公園においいて急増している外国人登山者をターゲットにした英文よる地図作成出版に向けて,大雪山国立公園の概要,登山道荒廃実態の紹介,新たに環境省が設けた「大雪山グレード(登山道のクラス分け)」などの学術成果に関して,7000語を超える解説文を準備し,印刷屋に入稿した(H28年夏までに出版予定)。さらに,台湾の陽明山国立公園での登山道維持管理に関する文献収集・聞き取り調査と登山道荒廃調査を行った。 これまでの研究成果は,1編の論文および2件の学会発表の形で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,山岳国立公園における協働型登山道維持管理に関わる問題点の解明とその解決への方策を探り,持続的な協働型登山道維持管理のプラットフォームを構築することを目的とするもので,初年度には以下の調査を行うことができた。 冬期の旅行者(国内および海外からの旅行者)200名以上に対して,層雲峡および然別湖において,登山道に関する「大雪山グレード」やジオパーク(期待するジオ資源)に関するアンケート調査を行った。協働型登山道維持管理に関わるステークホルダー6名から聞き取り調査を行った。環境省管理官と将来のデータベース作成に関する情報交換を行い,春・秋に大雪山国立公園関係1市9町で実施される「登山道維持管理意見交換会」に出席し,「共同型登山道管理データベース」構築に向けた調査の説明を行った。これらを総合すると,登山道荒廃に関しては関係者の意識は高く,環境省主導の協働型登山道維持管理の枠組みが形成されつつあるものの,実際の維持管理を持続的に実施するには,多くの問題があることが理解できた。 また,大雪山国立公園において,地上写真ならびにUAV(無人自立飛行機)を用いた登山道の3次元荒廃調査法の開発に関する調査を行った。地上写真による登山道の3次元荒廃調査方法に関しては,写真撮影法とその解析のマニュアルを作成したが(ウェブ公開予定),UAVを使用した撮影・解析マニュアルは作成中である。近年大雪山国立公園においいて急増している外国人登山者をターゲットにした英文よる地図作成出版に向けて,大雪山国立公園の概要,登山道荒廃実態の紹介,新たに環境省が設けた「大雪山グレード(登山道のクラス分け)」などの学術成果に関して,7000語を超える解説文を準備し,印刷屋に入稿するに至った(H28年夏までに出版予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度には,北京で開かれる国際地理学会議において,登山道荒廃に関するセッションを設け,そこでこれまでの研究成果の発表を行うとともに海外の研究者と議論を行う。これらの最新の成果については,学術雑誌で特集号を企画して,公表を行う予定である。 H28~29年度にかけて,大雪山国立公園において,夏期の旅行者(国内および海外からの旅行者)に対して,アンケート調査を行い,協働型登山道維持管理に関わるステークホルダーからの聞き取り調査を継続する。大雪山国立公園を含めた事例研究地域について,現在の登山道荒廃データおよび維持管理手法(工法)に関するデータベースを作成し,ウェブサイトの開設による全国の山岳国立公園への波及と全国データの収集を行う。この際,旅行者が作業に関わり,データベースにアクセス・アップデート(すなわち,旅行者自身が登山道維持管理の実践成果をデータベースに登録)できるようにする。このデータベースを通して,より多くの利用者が登山道維持管理に興味を抱くように誘導し,E4のツアー参加者を増やしていくシステムを作る。 H27年度の成果を含めて全体をまとめると,(1) UAVの導入でDの現・登山道荒廃測定ツアーをE4に位置づけられるよう改善してモデルツアー化し,(2) 誰もが使えるようUAVによる登山道荒廃評価マニュアルを作成し,(3) 全国の山岳国立公園レベルで登山道維持管理データベース作成を行い,(4) ツアー参加者がその作業結果をデータベースに入力できるようにすることで成果を「見える化」し,(5) そのことで,より多くの人が登山道の協働型維持管理に新規参加・持続的参加できるようモチベーションを高めるようにする。これら一連のフレームワーク構築で,協働型登山維持管理の中に持続的観光を取り入れ,人口減少・高齢化社会の中で登山道の維持管理を可能とする。
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