2016 Fiscal Year Research-status Report
レギュラトリ科学と政策科学に基づく安全安心科学による技術システムの社会実装展開
Project/Area Number |
15K12459
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
三宅 淳巳 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 教授 (60174140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澁谷 忠弘 横浜国立大学, リスク共生社会創造センター, 准教授 (10332644)
野口 和彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (50436763)
南川 秀樹 横浜国立大学, リスク共生社会創造センター, 客員教授 (60751485)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レギュラトリ科学 / 政策科学 / 安全安心科学 / リスク管理学 / 社会実装 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代社会の安全は,リスクの解析,評価,対応のそれぞれのステップで,学問的に創造的再構築することが求められている。安全が影響を及ぼす直接の安全事象に対する学問であるとすると,安心は安全に関与する組織や制度に対する信頼体系を構築することによって得られるものあり,安全安心科学の体系化と社会実装は,国家が総力を挙げて総合的に取り組むべき重要な対象である。本研究では,工学をベースとし社会学的アプローチを加えて構築してきたこれまでの安全学に,レギュラトリ科学と政策科学的要素を学術基盤として導入することにより,安全安心科学の学理構築と技術システムの社会実装への方法論を創出することを目的として調査研究を実施した。 本研究では,レギュラトリ科学と政策科学に基づく新たな安全安心科学を創出するための検証として,これまでの原子力施設,化学プラント等,巨大技術システムの建設,運転におけるリスク概念導入,リスクベースアプローチの実績とその後の活用における留意点と本質安全との比較検討を行い,その成果を公開セミナーにて発表し,関係者,聴講者とともに討論を展開した。 一方,各技術システムのリスクの比較検討を行うために,燃料電池自動車用水素ステーションを例にリスク分析と評価を行った。特に,従来の工学的リスク評価を実施する前段階にHazard Identification (HAZID) studyを実施することにより,システムの内的要因とともに自然災害や環境変化等,外的要因に由来するシナリオについても考慮した事前評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
巨大技術システムにおける安全確保のために,従来から工学的手法によるリスクの同定,発生頻度や影響規模の評価などが行われており,こうしたリスク評価の結果に基づいて安全性向上のための対策が実施され,さらにはその対策の効果についても工学的な評価が行われつつある。技術システムにおける安全確保のための一連の活動の重要な課題のひとつは,安全目標の設定すなわち,「どこまで安全性を追求すれば十分なのか(How safe is safe enough ?)」という問題である。 原子力施設や石油精製施設,化学プラントのような巨大技術システムでは,災害や事故時の影響がシステムの内部にとどまらず,周辺の住民や環境に広範かつ壊滅的な影響を及ぼすことは周知の通りである。また,最近では規制緩和と安全確保の両立という観点からも社会的に受容される安全水準に関する定量的な議論のための基盤となる方法論や手法を整備することが必要となっている。ここでは,リスクが未実証な新技術等もあり,政策決定のためには,ハザードの受け手となる各ステークホルダー間での科学的知見と規制,政策を補完するレギュラトリ科学の導入が必要である。 本研究では,巨大技術システムについて申請者らが提案した社会受容性に基づく安全性向上の仮説モデルをベースに,各種技術システムの設計や建設,運転や維持管理におけるリスク概念の導入,リスクベースアプローチの実績について,各種調査を行うとともに,一般市民ならびに各界の有識者ヒヤリングによって検証を行った。さらに,原子力施設,化学プラント及び交通システムを例に,リスクベースアプローチの限界について仮説を立て,議論を提起し,公開セミナやシンポジウムにおいて討論を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては,第5期科学技術基本計画(2016)やエネルギー基本計画(2014)を念頭に,前年度までに創出した安全安心科学と新技術の社会実装の方法について有識者,産業界の安全担当者との議論を行い,論点を整理した結果に関し,産業界のリーダー,行政官庁ならびに研究機関の研究者らと議論を行う。 水素エネルギーに代表されるような,今後構築すべき社会におけるリスクは未実証な要素を多数含んでおり,従来の法規制の枠組では解決できないものも多く,未実証な事象に対する規制,それに基づく政策決定を実現するために,深化,細分化を進める科学技術と社会科学を補完するレギュラトリ科学,政策科学の導入検討を行う。 具体的には,現在急速に進む新エネルギー創出における関連技術として,水素エネルギー普及のためのインフラ技術を取り上げ,社会実装に向けた取組の検証を行う。これらの検討は,現行法規制の見直しを含む可能性を含むものであり,そこにレギュラトリ科学,政策科学の視点から,研究者,技術開発担当者のみならず,技術管理,組織経営,出資者を含めた意識改革が迫られることとなり,科学技術立国を標榜する我が国にとって大きなインパクトを与えるものとなる。
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Causes of Carryover |
セミナー及び有識者ヒヤリングを年度末に実施したため,データや情報の整理を十分に行うことができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度末に実施したセミナーおよび有識者ヒヤリングの結果得られたデータや情報を整理し,学会発表ならびに論文投稿の費用に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)