2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K12461
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福重 元嗣 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10208936)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済学的効率性 / 工学的効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度においては、研究計画の第2段階である、シミュレーションによる研究を行った。この段階においては、経済学的な規模に関する生産性の定義である、規模に関する収穫逓増型、規模に関する収穫一定型および規模に関する収穫逓減型の生産関数により生成されたデータに対して、包絡線分析法で用いられるCCR,BCC等の手法を適用し、経済学的な規模に関する効率性と包絡線分析法における規模に関する効率性の関係についてシミュレーションにより確認を行った。 シミュレーション分析の結果により、変数変換を行えば、経済学的効率性は包絡線分析法により概ね程度分析可能であることが明らかとなった。具体的には、工学的効率性ではインプットもアウトプットも通常は計測されたレベルのみを対象としているが、経済学的な効率性を捉えるためには、対数変換した変数に対して包絡線分析法を適応することによってある程度の分析が可能であることが分かった。 シミュレーション分析では、経済学的な規模に対する効率性に加え、確率的な誤差としての非効率要素を含んだデータを生成することが可能であり、この誤差項によって生じた非効率性部分が包絡線分析法ではどのようにとらえられるのか、具体的な包絡線分析法による効率性評価の部分に着目し、その対応関係に関して分析を始めている。 この研究の遂行過程において、計量経済学的手法である修正通常最小二乗法(COLS)、フロンティア関数及び確率的フロンティア関数による生産性(効率性)の分析と、統計学的手法である分位点回帰の間には、一部識別性に関する問題が生じる可能性があることが理論的検討より見つかった。この部分については次年度以降にさらに検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の第2段階としているシミュレーションについて、可能性あるケースについては網羅的にシミュレーションを行い、その結果をすでに得ている。シミュレーションの途中で、若干の解決すべき追加的問題を発見したが、この部分は次年度以降にさらに解決策を検討することにしている。シミュレーション結果については、現在、さらなる検討をしているが、この検討によって、第3段階である。経済学的効率性と工学的効率性の概念の相違や理論的接合可能性の検討に進むことが可能となり、研究計画は順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、研究計画において予定している第三段階の研究へと入る。この研究段階では、経済学における生産の効率性と費用の効率性が、工学的効率性の計測手法である包絡線分析法における幾つかの仮定とどのように関連しているのか、第二段階でのシミュレーション分析の結果を検討しながら、必要であれば更にシミュレーション分析を追加して、工学的効率性評価による近似の有効性について検討する。加えて、その逆のケースである、包絡線分析法が仮定するような一般的な生産関数や費用関数の仮定の下で、三つの効率性に関する近似がどのように成り立っているのか、包絡線分析法によって計測された非効率指標との比較を、生産関数よ費用関数の推計に関するシミュレーションを用いて行い、近似の有効性を検討する。 また過年度までに明らかとなった、経済学におけるフロンティア関数による仮定と統計学で用いられる分位点回帰における推計結果の関係をシミュレーション等を用いて、実験及び理論的検討を行う予定である。 最終年度である平成29年度の後半には、これまでに明らかとなった効率性概念に関する成果をまとめ、報告書の作成を行う。もちろん、報告書の作成過程においていくつかの研究成果については国内外の学会での報告や査読付き雑誌への投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
為替レートの変動により実際の支出額と支出計画額の間に差が生じたため、若干の支出残が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
為替レートの変動も考慮しながら、適正に使用する予定である。
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