2015 Fiscal Year Research-status Report
バッテリーセキュリティー社会のための電池内部の見える化技術基盤創成
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15K12467
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋田 俊之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40180814)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電池デバイス / 信頼性・耐久性 / 見える化 / リチウムイオン二次電池 / アコースティックエミッション / 音響学的手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
電池デバイスの長期信頼性・耐久性確保のための学術的基盤の構築を目的として,Liイオン二次電池を対象とした充電・放電サイクルに伴う損傷の音響学的非破壊計測,すなわち損傷の見える化を図るための研究を実施した. まず,電池の充電・放電サイクル試験と同時に,アコースティックエミッション(AE)計測ならびにレーザー顕微鏡観察ができる試験セルを開発した.これは,実験中にLiが大気に晒された場合,瞬時に反応が進行し,電池としての機能を失われるため,大気と電池セルを遮断できるように設計・試作したものである.次いで,Li正極,電解液を含浸させたセパレータならびにCu基盤上に形成したSi負極からなるハーフセルを用い,充電・放電サイクルに伴うAE計測とSi負極表面のレーザー顕微鏡観察を組み合わせた検討を行うことにより,充電におけるLiイオンのSi負極への移行プロセスは膨張挙動の全く異なる3段階から構成されていることをはじめて見出した.また,充電・放電サイクルにおいて主たる機械的・電気的劣化は第1回目の充電過程で発生しそれ以降の充電過程ではほとんど生じないものの,放電過程では2回目以降も損傷が発生していることを発見し,電池性能の長期信頼性・耐久性確保のために有用な知見を得ることができた.さらに,上記の損傷過程がSi負極とCu基盤の間の界面はく離により誘起されていることを示し,Si負極のはく離領域とはく離していない領域との境界でSi負極の脱落破壊が発生していることを見出した. また,電池デバイスの経年劣化メカニズムの解明に関する検討を支援するために,第一原理計算二基づく数値シミュレーションを行っている.今年度においては,Liイオンの移動ならびに物性に関する種々のパラメータの取得と,数値解析コードの作成を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電池デバイスの機械的ならびに電気的損傷の見える化技術を構築することにより,バッテリーが多用される現代社会の安全・安心に寄与することが,本研究の主たる目的である.代表的なLiイオン2次電池を対象とした実験的検討により,AE計測に基づく手法により機械的損傷を非破壊的に検出できることを示したことは,目的とする見える化技術の構築において良好な見通しを得たものと判断している.さらに,本成果の新規性・独自性は高く,かつ波及効果は大きいもとから,当該研究分野へのインパクトならびに貢献は大きいものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初予定の計画に沿った研究が展開できているので,今後も申請課題の検討を推進する予定である. なお,AE法について良好な成果が得られているものの,予定していた周波数依存性に関する解明までは進展させることは達成することができていない.AE特性の周波数情報については極めて膨大なデータを取得することには成功しており,今後,体系的なデータ解析を行った上で周波数依存性に関する解明を図ることとしたい.また,同時に,能動的に周波数を変化させたAE信号を送信・受信させて非破壊計測する試みについても今後十分に検討することを予定している. 十分なご理解をお願いする次第である.
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Causes of Carryover |
当初予定では,開発するAE計測法ならびに評価法を,Liイオン二次電池に加えて,重要な応用分野である固体酸化物型燃料電池(SOFC)に対しても,既存のSOFC模擬環境装置を活用することにより適用性を検討することを想定していた.しかしながら,当該既存設備の試験部セラミックス部材が破損してしまい,一部の予備的実験は実施することができたものの,修復のために予定していた実験を遂行することができなかった.このため,平成27年度においては,Liイオン二次電池の作製費に対して比較的高額の経費を要するSOFC試験の作製を実施しないで,Liイオン二次電池と対象とした評価・解析を重点的に行った.これにより,次年度使用額が発生することとなった. 十分なご理解をお願いする次第である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画では,平成27年に実施する予定であったAE法を用いた固体酸化物型燃料電池(SOFC)の機械的損傷評価に関する研究を,平成28年度に実施し,経費をSOFC試験片の作製のために使用する.原材料費(ジルコニア,イットリア,ガドリニア等),ならびに焼結用消耗品が主たる経費となる.
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Research Products
(5 results)