2016 Fiscal Year Research-status Report
システム安全としてのリチウムイオン電池の安全設計手法の構築
Project/Area Number |
15K12469
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平尾 雅彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80282573)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池 / 安全設計 / リサイクル / リユース / 環境負荷 / フォールトの木解析 / 難燃性電解液 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウムイオン電池(以下LIB)のライフサイクルを考慮した安全設計手法の開発のために、特に使用後の処理過程を対象として、安全性と環境負荷の両面からの評価を行った。 使用後の処理技術としては、希少資源を含む電極材料のリサイクル、および太陽光発電や風力発電などの不安定な再生可能エネルギー発電の蓄電池としてのリユースが提案されている。各シナリオについてライフサイクルモデルを構築し、環境影響をライフサイクルアセスメント(LCA)によって評価した。リサイクルについては、処理プロセスにおける安全性リスクとしてLIBの発火、電解液の溶出、感電が考えられるが、今回は最も発生時の被害が大きいと考えられる電池の発火に注目し、事故に至る基本事象の分析・抽出を行い、フォールトの木解析(FTA)を行った。基本事象の発生確率が不明であったため、FTA構造から安全性に関わる重要度が決定される構造重要度を用い、電解液の着火という重要事象を抽出した。さらに、電解液への着火を防ぐ対策案として、電解液へ難燃材を添加する技術、水系電解液を用いる技術を対象に、新規技術導入による環境負荷と安全性の変化を評価し、難燃剤使用による環境負荷の増加に対し、安全リスクの大きな低下という効果が得られることを示し、難燃性電解液技術の有効性を示した。 以上のような事例分析から、LCAによる環境影響評価手法とFTAによる安全性分析手法を適用し、環境面、安全面からLIB処理技術導入の選択を支援できる手法を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度からの基礎検討をさらに進めると共に、計画に沿ってライフサイクルを考慮した安全対策の評価手法の構築に着手した。今年度は、リチウムイオン電池のライフサイクルの中でも安全性評価事例が少ない、使用後の処理プロセスに着目し、環境負荷評価とフォールトの木解析を行うことができた。また、環境面、安全面からLIB処理技術導入の選択を支援できる手法の提案を行うことができた。 しかし、製品の構造上の問題やヒューマンエラーといった要因間の相互関係を明確にすること、各要因事象の確率を推算することは、事故事例データの不足などにより十分に進捗しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査や専門家へのヒアリングなどによりさらに技術情報を収集し、シミュレーションモデルの精緻化を行い、要因間の相互関係を分析し、リチウムイオン電池のライフサイクル全体での安全評価と環境影響評価を可能にする。最終的には安全性評価手法とシミュレーションによるシナリオ分析、さらにライフサイクル環境影響評価手法を統合し、これらの評価結果に基づいたリチウムイオン電池の安全設計手法をアクティビティモデルとして提示する。 今年度着任した助教に連携研究者として研究に参画させ、学生1名にも本課題研究の遂行に参加させる。
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Research Products
(1 results)