2015 Fiscal Year Research-status Report
火災旋風の学理:渦構造解明と安定性理論の体系化に向けて
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15K12472
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
中村 祐二 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50303657)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 火災 |
Outline of Annual Research Achievements |
火災旋風の安定性検討のため,本年度は一様流中における液体燃料上に形成される火災旋風を定常的に長時間持続させる「定常燃焼実験系」の確立を行った.既存の低速風洞設備では,中速度であれば問題ないが,0.4m/s以下の流れ場では一様性が不十分であった.模型実験で火災旋風を実現するためには低速度が安定且つ一様に得られなければならない.この問題を解決するため,従前の風洞(ハニカム構造)の後段に数段のメッシュ構造を配備する風洞構造への大幅な見直しを実行した.段階的なメッシュ配置により大きな変動が徐々に除去され,最終的にはほぼ均一な一様流を得ることができる.一様性については,パラフィンを染み込ませた線香の煙を可視化することで確認した.なお,線香を流れ場に挿入すると,その後流に渦構造を生じるため,上記の擾乱同様,メッシュでそれを効果的に遮ることとした.定常流れ場の達成の他,燃料供給部にも定常性を担保するための冷却装置および液面レベル保持システムを導入し,燃焼場全体の定常性を格段に向上させることができた.本風洞改善内容については,ICFD2015(国際会議)にて招待講演の一部として紹介した. 本年度は建築研究所での大型火災風洞を用いた火災旋風実験を実施し,従来の模型実験ではあまり気にされていなかった床面の熱状況において相似条件が成立しているかどうかを調べた.結果,研究室に設置した小型火災風洞では床面の温度上昇部の領域ならびに温度レベルが大きく異なる可能性があることがわかった.気相内のダイナミクスに対して床面温度が与える影響は小さいため従来の相似則で十分であるが,火災旋風が「動きまわる」の際は床面がその動きそのものに与える影響は無視できない.床面の温度上昇まで含めた相似則の確立も重要な研究課題になり得ることを指摘した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初目的であった ①定常状態を得られる実験系の確立 ならびに ②火災場における流れ場を正確にする(=見える化)のための可視化技術の検討を中心に実施し,それぞれに対して目的を達成することができた.具体的には既存の小型風洞の構造を根本的に見直し,ハニカム構造とメッシュ構造を併用することで実験条件として必要な0.1~0.4m/sの風速が安定して得られる低速風洞への改善を施すと共に,定常化のため,トレー下部に水冷構造を設けて液体燃料の温度上昇を抑え,燃面レベルを保持するための液面制御機構を備えた.以上3点の工夫を加えることで低速状態で長時間同じ燃焼条件を保持できる状況を風洞内で実現することができた.流れ場の可視化についてはスモークワイヤ法を採用したが,長時間流れ場の可視化には向かないため,パラフィンを塗布した線香の煙によって可視化する方法を採用した.回転運動を遮るためのメッシュを活用することで,風洞真上からの煙の軌跡を観測すれば準定常状態の流れ場の可視化が可能となった.系の安定性を調べる目的で,試験的に擾乱を添加したところ,変動状態が急激に収束して安定状態に戻ることを確認した.以上により擾乱の影響を調べることが十分に可能なシステムであることが確認された.
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Strategy for Future Research Activity |
火災旋風の安定性を議論するには,火災旋風がない状態のところに擾乱が加わることで火災旋風へと遷移するか否か,あるいは火災旋風が存在する状態において擾乱を加えた場合に別の状態に遷移するか否かを調べればよい.特に前者の調査のためには,火災旋風が発生する・しないの臨界状態を系内に再現し,そこに擾乱を加えて火災旋風へと成長する非定常過程を観察することが肝要である.この準備である「臨界状態」を再現するところが第一の課題である.火災旋風はそもそも炎と渦との干渉により実現するものであるため,それへと成長する・しないの臨界状態は物理的には炎と渦との干渉が正方向(火災旋風へと発達させる方向)に働くか否かを決める条件に等しい.より具体的には,渦度の時間変化が時間発展する状況に相当するため,浮力による渦度の増加が,床面(あるいは周囲流体)との粘性力によって抑えきれるかどうかで決まるはずである.この考えから想定すれば,粘性力と浮力の比(~グラスホフ数)によって火災旋風への発展の有無が整理できるはずである.この予測を検証すべく,火災旋風への臨界状態を制御パラメータ(例:流速,スケール)で描く物理平面上にマッピングし,遷移の臨界条件の整理を試みる. 一旦臨界条件が決まれば,数学的に擾乱に対して発展するか否かを決める状態を決めていることに等しいため,dispersion relationの時間発展項が臨界条件を示すパラメータの関数として与えられるはずである.臨界条件よりも幾分か弱い・強い擾乱を与えた際の応答性(=減衰・発展の時間変化)を調べることで,どのような関数系になっているのかを推定する.これを実現するためには渦度の強さの時間変化を調べることが必要になるため,熱線風速計などによる速度計測を行う予定である.
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Causes of Carryover |
本年度実施予定の内容を終えたため(無理やりゼロにする必要がなかったため)
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
渦と火炎との干渉問題に関する消耗品購入に充当予定
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Fire Whirls in Wildland Fires2015
Author(s)
Salaimeh, A., Akafuah, N., Forthofer, J., Finney, M., Kuwana, K., Sekimoto, K., Nakamura, Y., and Williams, F. A.
Organizer
The 6th International Fire and Ecology and Management Congress: Advancing Ecology in Fire Management (6th AFE Fire Congress)
Place of Presentation
San Antonio, TX, USA
Year and Date
2015-11-16 – 2015-11-20
Int'l Joint Research
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