2015 Fiscal Year Research-status Report
法花粉学的検査の方法論や検査データの科学的解釈法の構築に関する基礎研究
Project/Area Number |
15K12476
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
三宅 尚 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (60294823)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空中飛来花粉 / 花粉堆積モデル / 花粉付着様式 / 都市緑地 / 表層花粉 / 法花粉学(的検査) |
Outline of Annual Research Achievements |
1)都市緑地における表層花粉の堆積様式 主に高知公園および高知大学朝倉キャンパスとそれらの周辺の丘陵地にて,植生調査と土壌表層試料の花粉分析を行った.その結果,a)試料採取地点の近隣に丘陵地にも分布する樹木種が植栽されている場合,地点間で林冠のうっ閉度や樹木組成に多少の変化があっても,花粉組成には変化が乏しい,b)試料採取地点のうっ閉度が高く,その近隣にのみ偏在する樹木種がある場合,その花粉が特徴的に出現する,c)うっ閉度が低い場合,花粉量は化学的・生化学的分解を受けて少ないことなどが分かった.b)は犯罪場所の特定に,c)は犯罪場所の環境の推定に寄与する. 2)都市域における空中飛来花粉の堆積様式 朝倉キャンパスに衣服を着せたトルソーを設置し,2015年6月~2016年3月にかけて,2週間おきに空中を飛来し衣服に付着する花粉を調査した.調査期間を通して20~50個/100cm2/日の花粉が付着していた.スギ属,シイ属-クリ属などキャンパス外の丘陵地に主な散布源があり,二次飛散したと推定される樹木花粉が大半を占め,キャンパス内の緑化樹の花粉も開花期を中心に付着していた.トルソーの設置場所と建物や緑化樹との位置関係,布地の種類などによって,付着花粉の量や季節的な変動パターンが異なった. 3)布地試料に付着させた花粉の残存様式 サツキ(ツツジ科)をモデル植物に選び,開花直後の花に布地試料を擦りつけ,それらを手で払う,雨にさらす,洗濯するという処理にかけ,処理後の花粉の残存様式を調べた.サツキ花粉は粘着糸を持ち花粉どうしが絡まるため,数百の花粉が数珠玉状に連なる状態で布地に付着していた(最大1万粒/25cm2/試料).サツキ花粉の場合,手で払っても雨にさらされても布地試料についた花粉を完全に除去することは困難である一方,洗濯すると布地の種類に関係なく除去されると推定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,法花粉学的検査の方法論や検査データの科学的解釈法の構築に向けた指針を策定することを目的として,都市域における包括的な花粉堆積モデルの構築と衣服への花粉付着様式の体系化を行う.これらの解明に向けて,前者は1)都市緑地における表層花粉の堆積様式と2)都市域における空中飛来花粉の堆積様式に,後者は3)布地試料に付着させた花粉の残存様式に関する調査・実験に取り組んでいる. 1)に関しては,空中写真の判読と現地踏査によって,まず,市街地とその周辺の丘陵地の植生や都市緑地の空間分布などを把握した.本年度は今後の調査設計,調査地の選定,都市域における花粉堆積様式の概要把握などに力点を置き,まずは市街中心部の大規模な都市緑地から調査を開始した.現在までのところ,調査はほぼ順調に進展している.2)に関しては,実験のための環境整備や物品調達に時間を要し,実験開始が少し遅れたものの,その後,現在までデータ収集を定期的に進めている.3)に関しては当初の計画通りに進め,本年度分の実験を無事,完了した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の遂行に必要な調査・実験の体制を本年度にほぼ整備することができたため,基本的には当初の計画・方法の通りに次年度以降も継続して調査・実験を進める.本年度の成果については,学会発表を行うとともに,学術誌において順次,公表する. 1)都市緑地における表層花粉の堆積様式に関しては,本年度の調査結果を踏まえ,市街中心部に点在する小~中規模の都市緑地を中心に調査を進める.土壌表層試料の土壌分析,花粉の保存状態の調査なども本格的に実施する.2)都市域における空中飛来花粉の堆積様式に関しては,本年度にフォローできなかった主な樹木の開花期(3~6月)のデータを補完し,まずは年間にわたる花粉の飛来・衣服への付着状況(花粉カレンダー)を把握し,その後も樹木のマスティング現象を考慮し継続してデータ収集に努める.3)布地試料に付着させた花粉の残存様式に関しては,開花フェノロジーや媒介システム,花や花粉の形態などの違いに着目して,次年度はキンシバイ(オトギリソウ科)をモデル植物に選び,本年度と同様の実験を行う.
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Research Products
(1 results)