2017 Fiscal Year Annual Research Report
Volcanic eruption potential diagnosis by volcanic gas observation
Project/Area Number |
15K12485
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大場 武 東海大学, 理学部, 教授 (60203915)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 火山ガス / 噴気 / 化学組成 / 同位体比 / 脱ガス / シーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年5月から2018年3月まで箱根山の大涌谷と上湯場の二か所で噴気の採取・分析を,毎月一回の頻度で,繰り返し実施した.2017年度は,2015年5月のような群発地震や噴火は発生しなかったが,マグマ脱ガス活動が若干上昇したと判断される変化が見られた.すなわち,2017年4~5月にCO2/H2S比とHe/CH4比が底を打ち,その後,2017年末にかけて緩やかな上昇を示した.2015年5月にこれらの比は群発地震の発生と同期して顕著な上昇を示している.2015年の群発地震の5~7ヶ月ほど前に噴気に含まれるH2の同位体比が通常のレベルから低下した.この変化は,大涌谷と上湯場両方の噴気で生じていた.H2OとH2の間で水素同位体交換反応平衡を仮定した場合の見かけ平衡温度(AET)を計算すると,両噴気で群発地震前は,100℃前後であったが,群発地震後は120℃程度まで上昇した.2017年の4~5月から年末に向けて,CO2/H2S比とHe/CH4比が上昇したが,それよりも少し先行する2017年1~3月にH2の同位体比がわずかに低下している.H2の同位体比低下が2つの噴気で同時に発生しているので,この変化は熱水系の比較的深部で発生していると考えられる.H2の同位体比低下の際のAETが噴気の出口温度よりも低いことから,この変化は温度低下に伴うH2Oとの同位体交換平衡では説明できない.噴気に含まれるCO2は主にマグマ起源成分であり,H2SやCH4は熱水系成分と考えられる.よってCO2/H2S比やCO2/CH4比の上昇は,群発地震と同期してマグマ起源成分が増加したことを示している.H2については,マグマ起源成分と熱水系成分の両方に含まれている可能性があり,前者の同位体比が後者の同位体比よりも高ければ,群発地震に先行して発生した同位体比の低下はマグマ起源成分の寄与率低下として解釈できる.
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Research Products
(3 results)