2015 Fiscal Year Research-status Report
三次元形状復元技術による南海地震津波碑の判読:歴史地震研究と防災教育への活用
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15K12487
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
谷川 亘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (70435840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 庄一郎 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 社会防災システム研究領域, 特別技術員 (30507562)
浦本 豪一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 特別研究員(PD) (70612901)
原 忠 高知大学, 自然科学系, 教授 (80407874)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 南海地震 / 石碑 / 津浪 / デジタルアーカイブ / Structure from Motion / 帯磁率 |
Outline of Annual Research Achievements |
高知県内で発生した歴史地震津浪による被害を記録する石碑および石造物に関する文献を調査した。その結果、地震津浪に関係する石碑が31個、津浪の浸水域と高さを示す最高潮位碑が4個、供養のための地蔵や木版に記した記録など6個確認できた。また、宝永地震、安政南海地震、関東大震災および昭和南海地震に関する地震記録碑が高知県香南市から高知県宿毛市にわたり分布していて、建立場所は津浪地震の被害を過去繰り返し被っている地域(須崎市、高知市沿岸部など)に集中していることが明らかとなった。 高知県香南市、南国市、高知市にある石碑を対象に調査を行った。その結果、文献に記載されている石碑約10個を確認することができた。現地で確認できた石碑についてデジタルカメラを用いた写真撮影、帯磁率測定、および色測定を行った。Photoscan(Agisoft社)による3次元画像の構築を試みた結果、ほとんどの石碑に関して3次元画像構築を行うことができた。一方、モデル構築に失敗した石碑の多くは画像の欠損と手ブレが主な原因であった。そのため、再度写真撮影を行い、3次元モデルを生成した。さらに、Sketchfabというウェブブラウザ上で3Dモデルを表示できるウェブサイトの機能を利用して、構築した3次元画像を一般市民が簡便に閲覧できるか検討を行った。その結果、Sketchfab上でモデルの補正を行うことにより石碑の文字が見えやすくなり、また、注釈コマンドを使用することでモデルとリンクさせてさまざまな石碑の情報を提供できることが明らかとなった。また石碑ごとに帯磁率が異なることが明らかとなり、帯磁率から石碑の石材の特徴と起源を推定できる可能性があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、高知県内約40の石碑などの研究対象物のうち、約10個に対して3次元モデル化と帯磁率測定を行った。1つの石碑に対して3次元画像構築に一日以上要するときもあり、また、石碑に刻まれた文字を明瞭に表示させるためのデジタル写真の修正とPhotoscanでの作業内容の変更を試行錯誤的に行っているために、3次元画像構築に非常に時間を要している。そのため、色測定と化学組成分析についてはほとんど行っていない。ただし、化学組成分析はポータブル型のXRFロガーの使用を検討しており、他の岩石試料を用いてXRFロガーの試験測定を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年12月までに対象とする石碑・石造物について3次元モデルの構築と岩石物理データ(帯磁率・色・化学組成)の収集を行う。年度内に高知県内の地震津浪碑データベースを紹介するホームページを開設する。作業効率を高めるために、高スペックのPC2台体制で3次元モデル化の作業を進める。また、比較的単純な作業はアルバイト作業員に依頼する。 石碑を中心においた360度パノラマVR動画を作成して、石碑が設置している現場の様子がスマートフォンを用いてバーチャルに体感できるコンテンツを新たに追加する。 帯磁率と化学組成のデータから石碑の岩石の種類と岩石が採取された地点の推定を行う。そのために、高知県内に露出している主要な岩層の岩石物理データの収集を行う。 本年度は国内学会2つ(地球惑星連合大会、歴史地震研究会)に参加し、研究成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
①3次元画像モデル構築作業に時間を要した。②化学分析用の機器が調整不具合のため使用できなかった。①②のために、A.モデルを整理・再解析するための作業補助作業に遅延が生じ、人件費がほとんどかからなかった。B.石碑が設置している現場に赴いてデータ取得・画像撮影作業に遅延が生じたため、旅費および現場での作業補助(人件費)に要する経費が少なくなった。以上のことから次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
画像構築作業が遅延しているため本年度はモデル構築のためのPCを2台体制で行う。作業に迅速化が諮れるために、遅延していたモデル整理・再解析・現場作業補助に経費を当てる。また、同様に遅延している現場のデータ取得のための旅費に経費を当てる。
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