2015 Fiscal Year Research-status Report
眼底酸素濃度イメージングのための計測装置およびプローブ分子の開発
Project/Area Number |
15K12502
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
吉原 利忠 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (10375561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 英雄 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60359586)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イリジウム錯体 / りん光寿命 / 酸素 / 眼底虚血 / マクロズーム顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,眼底虚血疾患における眼底血管内および周辺細胞内の酸素濃度(分圧)を定量的に計測・イメージングするための眼底顕微りん光寿命イメージング装置およびりん光プローブ分子を開発することである。本年度は,眼底顕微りん光寿命イメージング装置および血中滞留型イリジウム錯体の開発を試みた。本装置を開発するために,マクロズーム顕微鏡の購入を行った。小動物の眼底部に焦点を当てるためには,顕微鏡の対物レンズと小動物の間に,前置レンズを置くことが必要であることを明らかにした。また,マクロズーム顕微鏡に,眼底網膜組織を蛍光色素でイメージングするためのCCDカメラと,眼底部に分布するイリジウム錯体の時間分解発光を観測するためのICCDカメラが搭載できるように工夫を行った。一方,血中滞留型イリジウム錯体の開発においては,近赤外りん光を示すイリジウム錯体にポリエチレングリコールを結合させることで,イリジウム錯体が水に溶解することを明らかにした。合成したイリジウム錯体およびフルオレセインをウサギに投与して,マクロズーム顕微鏡でウサギ眼底部を観察したところ,フルオレセインの緑色蛍光から網膜組織の構造をイメージングすることができ,また,水溶性イリジウム錯体の近赤外りん光から,眼底の血管をイメージングすることに成功した。また,ウサギの吸気酸素濃度を変えることで,イリジウム錯体のりん光寿命が変化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,眼底虚血疾患における眼底血管内および周辺細胞内の酸素濃度(分圧)を定量的に計測・イメージングするための眼底顕微りん光寿命イメージング装置およびりん光プローブ分子を開発することである。本年度は,マクロズーム顕微鏡にパルスレーザーを導入するポートおよび2台のCCDカメラを設置するポートを取り付けることで,眼底顕微りん光寿命イメージング装置を開発した。また,眼底部のみを観察するためには,対物レンズと小動物間に前置レンズを置くことが必要であることを明らかにした。 血中滞留型イリジウム錯体を開発するために,水に溶けるイリジウム錯体を設計・合成した。水溶性および生体親和性を達成するために,ポリエチレングリコールをイリジウム錯体に結合させた。合成した水溶性イリジウム錯体をウサギに投与して,光を照射したところ,眼底血管からイリジウム錯体の明瞭な発光が観測された。これにより,イリジウム錯体が血管内に滞留していることが明らかとなった。また,イリジウム錯体の時間分解イメージング画像を撮影して,寿命イメージングの構築に成功した。さらに,ウサギに酸素濃度を下げた空気を吸気させて,りん光寿命イメージングを行ったところ,寿命の増加が観測された。 以上の結果より,開発した装置とプローブ分子を用いることで,小動物の眼底血管内の酸素レベルを明らかにできることがわかったため,本年度の目標に到達している。現在,本研究成果を学会発表および論文投稿するための準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した装置およびプローブ分子を用いることで,眼底血管内の酸素レベルについて知見が得られることがわかった。平成28年度は,これらの装置とプローブ分子を用いて,眼底酸素分圧の定量化を進める。また,眼底病態は血管周辺の細胞に起因していることが多いため,細胞に移行するプローブ分子の開発を行い,細胞内の酸素レベルについて定量的なイメージング画像を取得することを試みる。 平成28年度は,細胞親和性を高めたイリジウム錯体を開発するための試薬や,細胞培養のためのプラスチック類を消耗品費として研究費を使用する。また,研究成果発表のための旅費として研究費を使用する。
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