2015 Fiscal Year Research-status Report
膜透過促進ペプチドとpH応答性低分子抗体を組み合わせた細胞選択的膜透過技術の開発
Project/Area Number |
15K12545
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
土居 信英 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (50327673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 進化 / バイオテクノロジー / 免疫学 / 共焦点顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者らが見出した新規の膜作用性ペプチドをpH応答性の低分子抗体と組み合わせることで、膜非透過性のバイオ医薬を細胞選択的に膜透過させる新たな技術を開発することを目的としている。 これまでに、一本鎖抗体の効率的な試験管内選択を可能とするPURE mRNAディスプレイ法(J. Biochem. 印刷中)を新たに確立し、この手法を用いて、一本鎖抗体遺伝子のCDRにヒスチジン残基を多めに導入したランダム変異体ライブラリーを作成し、細胞外環境と同じpH7.4で膜抗原に結合し、エンドソーム内環境と同じpH6.0で膜抗原から解離するpH応答性の一本鎖抗体の試験管内進化をおこなった。その結果、pHの違いによって抗原に対する結合力が変化する一本鎖抗体の変異体を取得することに成功した(未発表)。 また、申請者らが昨年までに見い出していたシス型およびトランス型の膜透過促進ペプチドB18およびB55(J. Control. Release, 212, 85-93, 2015)はウニ由来であったため、バイオ医薬に適用するには免疫原性の懸念があった。そこで、新たにヒト由来の膜透過促進ペプチドを探索し、エンドソーム離脱を促進するヒト由来のペプチド配列を世界で初めて同定することに成功した(特許出願、論文投稿中)。 さらに、これらの膜透過促進ペプチド融合タンパク質の膜透過性を迅速かつ正確に評価するために、核移行シグナル配列(NLS)の利用について検討した。従来の方法では、エンドソーム内のタンパク質と細胞質のタンパク質を区別して定量することは困難であったが、NLSを融合することで細胞質に移行したタンパク質のみが核に輸送されるため、分画により核画分を抽出し、タンパク質を定量することで、それらの膜透過性を定量的に評価することができた(J. Biochem. 159, 123-132, 2016)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、1年目の計画目標を概ね達成することができた。 また、2年目に予定していたヒト由来の膜透過促進ペプチドを早期に取得し、特許出願および論文投稿することができた。 さらに、2年目に計画していたNLSを利用した膜透過効率の定量にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに見出した新規の膜作用性ペプチドとpH応答性一本鎖抗体を融合することで、細胞選択的に効率よく、(1)エンドソームから細胞質に侵入できる膜透過抗体、および、(2)共添加したバイオ医薬を細胞質に取り込ませることができる膜透過促進抗体を作製する。 (1)シス型の膜透過促進ペプチドを融合した膜透過抗体の作製 前年度に取得したヒト由来の膜透過促進ペプチドをpH応答性一本鎖抗体のN末またはC末に融合した遺伝子を作製し、大腸菌を用いて大量発現・精製する。これを膜抗原過剰発現ヒト培養細胞に作用させ、共焦点顕微鏡により観察する。このとき、NLSを融合することで膜透過性を定量的に評価する。また、より実用的な条件として、細胞内タンパク質を阻害する抗体やペプチドを融合し、それらの作用が膜抗原発現細胞特異的に示されるかどうかを検証する。さらに、本手法の汎用性を示すために膜抗原の種類を増やして同様の検討を行う。 (2)トランス型の膜透過促進ペプチドを融合した膜透過促進抗体の作製 新たに同定したヒト由来の膜透過促進ペプチドはシス型のみで、トランス型の膜透過は促進しなかったことから、ウニ由来B55によるトランス型の膜透過促進メカニズムの詳細な解析を行う。具体的には、B55の欠失変異体を作製し、トランス型の膜透過促進に必要な領域を特定する。得られた短縮型の膜透過促進ペプチドをpH応答性一本鎖抗体に融合したタンパク質を調製し、蛍光標識Dextranや蛍光標識完全抗体などの蛍光分子とともに膜抗原過剰発現細胞に共添加し、各蛍光分子の細胞内への透過量が融合タンパク質の存在によって増加するかを検証する。また、哺乳類細胞に対して毒性を示す化合物や細胞内タンパク質を阻害するペプチドを膜透過促進抗体とともに細胞に共添加し、それらの作用が膜抗原発現細胞特異的に示されるかを検証する。
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