2015 Fiscal Year Research-status Report
高分子MEMSトランスデューサを用いたフレキシブル超音波アレイ
Project/Area Number |
15K12556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東 隆 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90421932)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自己形状推定 / 超音波ビームフォーミング / 直交関数展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は主に以下の4つの要素から構成される。1.高分子MEMS超音波トランスデューサの試作、2.自己形状推定を組込んだ超音波ビームフォーミング、3.デバイス及び超音波伝搬の数値シミュレーション、4.システム評価。本年度は主に1、2、3と、4の一部先行的な検討を行った。 1に関してはポリイミドフィルムと銅箔を積層した高分子MEMSの動作の原理確認、ジャパンプローブ製のフレキシブルトランスデューサ(曲探)を用いた先行的な検討、新素材の圧電薄膜の性能調査を行った。2に関しては、ジャパンプローブ製の曲探を、プログラミングな超音波ビームフォーマ―であるVerasonics社の超音波送受信・データ取得システムに接続した実験系を構築した。この系を用いた実験的な検討を通して、新たに超音波ビームの強度分布をin situに取得する手法を考案し、取得された超音波ビーム強度分布と、数値計算で求めた超音波ビーム強度分布の相関値を評価関数として、自己形状をルジャンドル多項式で展開して、低次成分から逐次形状推定を行う手法を確立した。3に関しては、matlabを用いて波超音波ビームを計算する数値シミュレーションを構築し、前記の2に活用した。4に関しては、グラファイト粉末をアクリルアミドゲルに混合した生体模擬ファントムを作製し、その中に設置した直径0.1mmのワイヤ列を撮像対象として、円弧や波型の型にフレキシブルアレイを固定する方法で、与えた形状が提案手法で推定できるかを確認した。結果、形状の推定精度は相対誤差1%と、その有効性を実証することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.高分子MEMS超音波トランスデューサの試作:ポリイミドフィルムと銅箔を用いた高分子MEMSの原理的な動作確認を行った。また新たに、薄膜の作成技術が近年大きく向上したことにより、従来主に圧電体であるPZTと同等な特性を持つに至った(K,Na)NO3圧電薄膜の性能調査を行った。平成28年度には、ジャパンプローブ製の曲探より厚みが薄く、よりフレキシブルに変形が可能なアレイの試作技術を確立する。 2.自己形状推定を組込んだ超音波ビームフォーミング:ジャパンプローブ製の曲探をプログラミング超音波ビームフォーマ―を接続した実験系を構築、新たに超音波ビームの強度分布をin situに取得する手法を考案し、数値計算と実験的に取得された超音波ビーム強度分布それぞれの相関値を評価関数として、自己形状をルジャンドル多項式で展開して、低次成分から逐次推定する手法を確立した。また推定された形状を用いて、生体模擬ファントムの撮像が可能であることを確認した。 3.デバイス及び超音波伝搬の数値シミュレーション:matlabを用いて音源から放射された波を回折と位相回転を考慮して観測点で重ね合わせる手法を用いた超音波ビーム計算を行う数値シミュレーションを構築し、この技術を確立した。 4.システム評価:粒径数十から数百ミクロンのグラファイト粉末をアクリルアミドゲルに混合した生体模擬ファントムを作製し、内部に設置した直径0.1mmのワイヤ列を撮像対象とした。フレキシブルアレイを形状が既知の円弧や波型アルミ枠に固定する方法で、形状推定精度を評価する手法を構築した。評価の結果、形状の推定精度は相対誤差1%と、自己形状の推定手法の有効性を実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の検討により、項目3に関しては概ね目標を達成した。平成28年度は項目1,2,4に関して主に検討を続ける。 1.高分子MEMS超音波トランスデューサの試作:ジャパンプローブの曲探ではミリオーダーの厚みのバッキング材があり、変形は可能であるが、これを被検体表面に貼り付けた場合には、必ずしもの皮膚へのストレスが十分に小さいとは言い難かった。より薄く、よりフレキシブルに変形が可能なアレイとして、厚み30ミクロン程度のポリイミドと銅箔の積層構造を用いた高分子MEMS及び、撓み変形を用いたKNN薄膜を試作し、その最大送波音圧や受信感度、周波数帯域幅、耐久性の評価を行う。また、指向性の評価も行い、ビームフォーミングの基本的特性の向上を目指す。 2.自己形状推定を組込んだ超音波ビームフォーミング:前年度に引き続き自己推定精度の向上を行う。またin situのビーム計測結果に対して、数値計算との比較が不要で、高速に評価出来る手法を確立して、自己形状推定手法の実用性向上を目指す。また直交関数を用いた展開手法に関して、解の唯一性と安定性に関する評価を行い、推定精度、安定性の向上や、推定演算の高速化を目指す。これによりアレイ形状の変化に対して、リアルタイムに自己形状推定が可能であるかを検証する。 4.システム評価:前年度の生体模擬ファントムを用いた検討に続けて、ex vivoや生体を用いた検討を行い、その精度評価や有効性の確認を行う。また前年度の空間解像度の評価に加えて、コントラスト分解能の評価をも行う。また手袋型アレイのコンセプトに関して、特許化などを目指す予定である。
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