2015 Fiscal Year Research-status Report
チーム医療におけるコミュニケーションを見える化する社会物理学の実践的応用
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15K12571
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
出江 紳一 東北大学, その他の研究科, 教授 (80176239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴鴨 よしみ 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60362472)
中島 淑恵 東北大学, その他の研究科, 助教 (90459131) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チーム医療 / コミュニケーション / リハビリテーション / 情報通信 / 社会物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、チーム医療における対面コミュニケーション(以下、対面)の定量化を行い、対面量と患者アウトカム・患者安全との関係を明らかにすることである。新規に開発された携帯通信機器を用いて連続4週間の勤務日における対面時間を計測し、日単位と週単位で解析した。参加者は、大学病院のリハビリテーション科医師4名、理学療法士4名、作業療法士2名の合計10名とした。平成27年11月30日から12月25日までの土日祝日を除く毎日、参加者は午前9時から午後6時まで名札型センサーをストラップで首からかけた。参加者の1名は、日記式の対面イベント記録をつけ、計測結果との一致度を検討した。全参加者に対して事後アンケートを実施した。その結果、参加者全員が全日程の計測を完了した。日記と計測データの照合から、対面量は分単位で計測されるが、日記で10秒程度の対面であっても2分間と記録されていた。日記の対面記録が無い日に2分間の対面が7回計測された(0.04回/人/日)。全ての対面ペアの1日の対面時間の平均(m)と標準偏差(SD)はそれぞれ、4.0~18.0分、10.5~23.3分であった。4週間の平均は、m 12.2分、SD 14.3分であった(変動係数 1.17)。10名の対面の組合せ45本の繋がりを100%として繋がりの密度を求めると、対面時間が日に1分以上15分未満は40.0%、15分以上は33.3%であった。週に1分以上15分未満は37.8%、15分以上は53.3%であった。さらに繋がりの描画により、職種による対面密度の差が示された。アンケートで携帯通信機器が胸元で動くことの不都合が指摘され、衣服に固定する方策が必要であると考えられた。今回の研究結果は、医療チームにおける対面量を定量化し、対面パターンを視覚化した世界初のデータである。また医療現場特有の機器装着上の問題が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医師、理学療法士、作業療法士という複数職種10名の参加を得て、所定の計画通りのデータを取得することができた。当初計画では、2週間を1クールとし、間に計測方法や機器の問題の有無などを検討する期間を設けて、2クール実施するとしたが、新規機器であるための準備期間、倫理委員会の承認スケジュール等の理由で、計測開始時期が遅れたため、4週間の連続計測とした。計測に大きな問題はなく、10名全員から全期間のデータを取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は一施設の回復期リハビリテーション病棟(約90床)において研究を実施し、対面の回数およびパターンと患者アウトカムおよび患者安全文化尺度との関係を明らかにする。このことを推進するため次の方策をとる。1)研究補助者を雇用し、事務局機能を強化する。2)研究実施病院の実務担当者を決め、研究事務局との連絡体制を強化する。3)工学部出身の大学院生を研究組織に加えて、データ解析の質とスピードを向上させる。4)地域イノベーション事業「知と医療機器創生みやぎ県エリア」と連携し、コミュニケーション研究に精通した研究者の協力を得る。5)携帯通信機器の衣服への固定する方策を立案し評価する。6)平成27年度のデータを学会で発表し、研究者や医療従事者と意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度は研究補助者を新規に雇用せず、既存の人員で対応することができたため、人件費を繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は他施設にてデータの取得を行う。研究実施施設とのスケジュール調整、質問事項などに速やかに対応する必要があるため、研究補助者を雇用し対応する。
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