2016 Fiscal Year Research-status Report
幻肢・幻肢痛から探る身体図式の長期変容神経メカニズム
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15K12572
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大内田 裕 東北大学, 医学系研究科, 助教 (80510578)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幻肢 / 幻肢痛 / 模倣運動 / voxel-based morphometry / fiber tracking / 脳拡散テンソル画像法 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内の身体情報である身体図式(内部モデル)の変容メカニズムを、四肢切断後に生じる幻肢・幻肢痛の変化に伴う脳構造・機能変化を通して捉え、身体図式の変容メカニズムを明らかにする。身体の消失という大きな身体変化が生じた場合に、脳の構造的変化をVBM(voxel-based morphometry)、脳の神経連絡変化を拡散テンソル画像法で捉える。さらに、幻肢の運動時に切断端近位部の屈筋と伸筋から筋活動を計測し、一次運動野から出力される運動指令がどのように変化するかを筋活動パターンより捉え、脳構造、神経ネットワークとの関係性を調べる。これにより、運動制御に利用される脳内の身体像の変容メカニズムを明らかにすることを目的とする。 幻肢痛患者において、ヘッドマウントディスプレイにより1人称の切断肢に当たる身体部位の運動を視覚提示し、その運動を幻肢により模倣運動を行わせるという、すでに我々が確立している模倣運動介入を行うことにより、幻肢痛軽減を図る。この幻肢痛軽減介入前後の脳構造と神経連絡変化を神経イメージング手法であるvoxel-based morphometryとDTIにより明らかにする。さらに、その脳構造の変化と切断部近位の伸筋と屈筋の筋活動パターンと上記の脳の変化との関係性調べる。 現時点では、条件を満たし痛みの低下が見られるまで介入を継続できた四肢切断患者は、1名のみである。痛みの変化との脳構造との関連性は見いだせなかったが、切断上肢への脳からの指令を伝える皮質脊髄路は、上肢が存在しないにも関わらず健側上肢と明確な差がみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
幻肢を有し、かつ幻肢痛を有する四肢切断対象患者が当初の予想より集まらず、さらに実験に参加した患者においても幻肢の消失、切断端部分の皮膚状態の悪化による中断などがあいつぎ、介入を実施できた被験者数が1名にとどまっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象の四肢切断患者の参加基準を、「強い幻肢痛を有する」から「痺れから軽度の痛みを有する」に変更し、さらに、介入の手法を、模倣運動療法に加えて、2016年にLancetで発表されたスウェーデンのチャルマース工科大学Max Oritiz-Catalan博士らの幻肢痛軽減に大きな効果を示した拡張現実を用いたシステムを導入する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度計画では、身体図式の変容メカニズムを明らかにするため、糖尿病による四肢切断患者に被験者として協力してもらう予定であったが、実験の中断や切断端部分の皮膚状態の悪化などの症例が続き、幻肢痛患者の募集に遅れが生じた。そのため計画を変更し、患者募集の基準としていた強い幻肢痛を有するという条件を緩和し、軽度の痛みやしびれまでを含め、患者募集を新たに行うこととしたために未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き四肢切断患者のリクルートと実験の謝礼、脳画像撮像の費用と、あらたに介入手法として導入する拡張現実を利用した幻肢痛介入システムの購入をおこなう。
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