2015 Fiscal Year Research-status Report
脳の可塑性を応用し皮質微小電気刺激を用いた大脳皮質感覚野の体部位局在地図の操作
Project/Area Number |
15K12576
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
満渕 邦彦 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50192349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深山 理 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30508205)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 脳の可塑性 / 脳体部位局在地図操作 / 皮質微小電気刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大脳皮質の感覚野における体部位局在地図の操作を試みるもので、シナプスの可塑性(Hebb 則)を利用し、感覚野の異なる2か所に設置した電極を用いて、1か所のニューロンが発火した場合に、適当な時間遅れでもう一方のニューロンも電気刺激し、同期して発火させてやるという操作を長期継続して行う事により、この2つの領域のニューロン間の結合強度を強化させ、一方の受容器に機械的刺激を加える事によって、2か所で感覚を感じる、という状況を起こさせる一方で、逆に、末梢における受容器の刺激により本来生じるはずの大脳皮質(感覚野)の感覚神経細胞の発火を抑制させる手法を開発する事を目的としたものであり、ラットを用いた動物実験により検討を加える予定である。 研究期間を2年間に設定しており、当初の予定では、1)受容野を刺激するための機械的刺激装置の作成、2)オペラント条件付け学習によるラットの動作制御、3)上記の2か所の末梢部位の感覚を支配する大脳皮質部位への電極埋め込み、4)Intra-cortical Micro-stimulation (ICMS:大脳皮質内微小電気刺激)装置の構築、5)上記システムを用いた大脳皮質感覚野の2か所の部位の同期刺激と同操作による両者間の結合強度の変化の検討、6)刺激条件等の変化に対する前項実験結果の検討、の項目の中で、着手できるものから実施する予定であったが、平成27年度の実績としては、このうち、1)の受容野を刺激するための機械的刺激装置の作成、4)5)の、大脳皮質内微小電気刺激装置の構築を行い、同システムを用いて大脳皮質感覚運動野の2か所の部位を一定の時間遅れで同期刺激を繰り返し、遅れ時間によって両者間の結合強度がどのように変化するかについての検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間を2年間に設定しており、最初の予定では、この2年度で、1)受容野を刺激するための機械的刺激装置の作成、2)オペラント条件付け学習によるラットの動作制御、3)上記の2か所の末梢部位の感覚を支配する大脳皮質部位への電極埋め込み、4)Intra-cortical Micro-stimulation (ICMS:大脳皮質内微小電気刺激)装置の構築、5)上記システムを用いた大脳皮質感覚野の2か所の部位の同期刺激と同操作による両者間の結合強度の変化の検討、6)刺激条件等の変化に対する前項実験結果の検討、を行う予定であったが、まず、4)の神経信号を検出して短時間で同期的な電流刺激を呈示する大脳皮質内微小電気刺激(ICMS)デバイスの設計と構築を優先的に行い、次いで、2か所の大脳皮質部位へ電極を埋め込み、作成した同装置を用いて、一方のニューロンが発火した場合に、一定の時間遅れでもう一方のニューロンも電気刺激し、同期して発火させてやるという操作を継続して行い、この2つの神経細胞間における高ガンマ帯信号の伝播効率(結合強度)が変化することが確認できたことから、準備段階(組織レベル)としては研究は概ね順調に進展していると考えている。ただ、平成27年度に予定していたが実施できなかった実験としては、動物(ラット)に対して、特定の部位に自覚的感覚が発生した際に特定の行動をとらせるという感覚発生の検証実験があり、これは、電極を体性感覚野の別々の2か所の位置に埋め込み、適切な時間遅れを伴った同期刺激を繰り返すことによって、新たな位置に感覚を発生させたり、発生を抑制したりすることが可能か、また、その感覚強度をコントロールしうるかの検証実験と並行して平成28年度に行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、1)平成27年度に開発した大脳皮質内微小電気刺激(ICMS)デバイスの改良とシステムを用いた大脳皮質感覚野の2か所の部位の同期刺激と同操作による両者間の結合強度の変化の検討を継続し、一方でスパイクを検出した時刻からもう一方に電気刺激を加えるまでの遅れ時間、電気刺激波形、電気刺激強度などの条件を変化させて繰り返し実施し、これらのパラメータの影響について検討を行うとともに、2)ラットに対して、末梢(皮膚、ヒゲなど)の2か所のそれぞれの部位に物理的刺激を加えた際、および、その2か所の部位の両者に同時に刺激を与えた場合の3通りの条件に対して、ラットがそれぞれ異なる反応(動作)を取るように学習を行い、この学習ラットの当該体性感覚野2か所に電極を埋め込み、(時間遅れを伴った)同期刺激を繰り返す事によって、この2つの領域の結合強度を変化させ、一方の受容野に対する機械的刺激によって、本来、感覚を生じないはずのもう一方の部位にも感覚を感じさせる、あるいは逆に、本来生じるはずの感覚の発生や大脳皮質の感覚神経細胞の発火を抑制させることが可能か否かについての実験を進める予定である。 なお、2か所の投射野を発生させる事が出来た際には、末梢と本来の投射野に相当する大脳皮質との経路の結合強度を(新しく作成した、末梢ともう1か所の大脳皮質との結合強度は落とさずに)抑制する手法についても、薬剤を用いたブロックや Spike-timing-dependent plasticity: STDP の原理に基づき検討を加える予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度に行うことを予定していた、ラットの末梢(皮膚、ヒゲなど)の2か所の部位のそれぞれに物理的刺激を加えた際、および、これらの末梢部位の両者に同時に刺激を与えた場合の3通りの条件に対して、ラットがそれぞれ異なる反応(動作)を取るように学習を行い、この学習ラットの体性感覚野に2か所電極を埋め込み、(時間遅れを伴った)同期刺激によって、この2つの領域の結合強度を変化させ、一方の受容野に対する機械的刺激によって、本来、感覚を生じないはずの部位にも感覚を感じさせる、あるいは逆に、本来生じるはずの感覚の発生や大脳皮質の感覚神経細胞の発火を抑制させる、ということが可能か否か検証するための実験系が実施できなかったために、その実験系の実施に必要な費用が次年度使用額として残ったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に予定していた上述の実験は平成28年度に実施する予定であり、その際のラットの購入・飼育費や、大脳皮質微小電気刺激に用いる電気・電子部品費など(物品費等)に使用する予定である。
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Research Products
(17 results)