2015 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞後に生じる痙縮が麻痺筋の神経筋接合部に及ぼす影響
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15K12579
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
李 佐知子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80599316)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 痙縮 / 神経筋接合部 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞後痙縮発症メカニズムはほとんどわかっていない。我々は脳梗塞後痙縮発症モデルマウスを作成し、痙縮発症メカニズムの一つとして脊髄運動神経細胞の活動性亢進にカリウムークロールイオン輸送体であるKCC2の発現現象が関与していることを証明した。近年痙縮の治療にボツリヌス毒素注射が推奨され、脳卒中ガイドラインでもグレードAとなっている。近年、脊髄損傷痙縮モデルにおいて、ボツリヌス毒素治療ターゲットである神経筋接合部が痙縮筋で断片化や神経支配率の低下などの形態異常を示すことが報告された。そこで本研究課題では、脳梗塞後痙縮発症マウスの痙縮筋においても神経筋接合部においてなんらかの変化があるのかを確認することを目的とした。 運動神経軸索が黄色蛍光たんぱく質YFPで標識されたマウスに脳梗塞を発症させ、その後2、4、8そして12週間経過したのち痙縮を発症した小指外転筋を採取しアセチルコリン受容体をa-Bungarotoxinで標識し、神経筋接合部および運動神経投射の変化を観察した。その結果、脳梗塞後、2、4、8、そして12週間経過した痙縮筋における神経筋接合部の脱神経や断片化などといった形態変化は特に観察されなかった。また運動神経軸索の投射においては、異常発芽などの形態変化はいずれの群においても観察されなかった。 痙縮症状を示す脳性麻痺や脳梗塞患者では、アセチルコリン受容体に対する薬効作用が変化することが報告されている。アセチルコリン受容体はa1を含むヘテロ5量体からなり、サブユニットの構成変化が受容体機能にも影響することが知られている。そこで現在は神経筋接合部の量的変化および、受容体を構成しているサブユニットの変化について検討することをおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に予定していた研究実施計画のうち、軸索および神経筋接合部の形態変化の観察を予定しており、脳梗塞後12週間まで観察し終えた。その結果、大きな形態変化は見られなかったことがわかった。研究実施計画では、機能に関わる変化として、シナプス機能について観察する予定であったが神経筋接合部の大きな形態変化が見られなかったため、受容体の質的な変化としてアセチルコリン受容体のサブユニット構成の変化について、また量的な変化として1筋あたりの受容体数などの検討を優先して行いたいと思う。対象としている骨格筋が小さいため、現在mRNAの変化を分析する実験を行っている。この研究計画は平成28年度に予定していた計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況にも記載したが、平成28年度の研究実施計画は神経筋接合部における形態および機能に関わる因子の発現変化について、まずはmRNAの発現変化を確認することを予定している。mRNAによる分析の結果、変化のありそうな因子においては、たんぱく質における発現変化についても確認する予定。またシナプス機能については、上記の結果で発現変化などが見られた場合、確認することとする。
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Research Products
(2 results)