2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12581
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
三枝 亮 豊橋技術科学大学, 人間・ロボット共生リサーチセンター, 特任准教授 (80386606)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歩行訓練 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、(1)認知運動強化のモデル構築、(2)複合感覚刺激を与える走行体の製作とこれらの検証実験を行った。本研究の目的は、視覚、聴覚、触覚を複合した感覚刺激を身体に与えて自己の運動認知を強化して運動機能の回復を効率化する方法を、人間医工学、リハビリテーション科学、理学療法学などの観点から明らかにすることである。この目的において、(1)の認知運動強化のモデル構築では、歩行機能障害を想定した枠組みにおいて、前記の走行体が人環境検知、運動計測、運動計画、運動誘導のサイクルを繰り返しながら、利用者の歩行訓練を誘導支援するアルゴリズムを考案し、この機能を実現する統合システムを実装した。本アルゴリズムでは、利用者者の運動特徴に基づいて生成された映像と音響の複合感覚刺激を用いて運動誘導するため、利用者ごとに適した目標運動イメージを与えることができ有効であることが評価実験により示された。また(2)の複合感覚刺激を与える走行体の製作では、特に視覚刺激を提示するための安定性を高めるために、研究計画時に利用を想定していた走行体の後継機を新しく製作し、前記(1)の統合システムを搭載した。後継機の走行体は、人運動検知(全身運動計測)、環境空間計測(広域レーザ計測)、移動性(全方向移動)に優れ、複合感覚刺激を与えるための映像投影装置と音響生成装置を備える。歩行機能障害を想定した運動計測や刺激提示には、従来トレッドミルなどの固定設置式の回転ベルトを用いた装置が一般的であるが、その場合は利用者の運動意欲が湧かず歩行訓練自体が成立しにくい。一方、本研究で開発した走行体は利用者の動作に合わせて移動するため、自然な環境で歩行を継続しながら複合感覚刺激を提示することができる。走行体は実際に連携機関の病院に持ち込んでパーキンソン病患者にて評価し、すくみ足などの運動機能の症状を緩和する効果が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した以上に研究が進展している。研究計画時では、主に初年度に複合感覚刺激による運動認知強化のモデルを構築し、次年度に前記モデルを搭載した走行体を製作して被験者による評価実験を行う予定であったが、初年度の完了時においてこれら二年分の研究目標が概ね達成されている。現在は走行体のシステム整備を進めており、主要機能である人環境検知、運動計測、運動計画、運動誘導の改良に加えて、理学療法士などの医療従事者が走行体を管理できるような管理システムを実装している。歩行訓練における運動イメージ効果の検証には中・長期的な追跡調査が必要であり、被験者数の増加に対応した被験者カルテシステムや、実験時の心理的バリアを緩和するためのコミュニケーション機能が望まれる。これらの機能を実装するとともに、現在、走行体の複製機を新しく製作しており、連携する医療機関に1機を配備して実験時の利便性を高める準備も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、患者による実証実験と適用分野の拡大を目指す。歩行訓練における予備試験において、パーキンソン病患者の一症例であるすくみ足への緩和方法として複合感覚刺激が有効であることが確認されたので、効果実証のために被験者数を増加する。本研究の方法は、片麻痺患者の歩行の歪みを緩和し歩行を対称化する効果も期待される。今後の研究では、連携機関である病院と被験者数を拡大した実験を実施し、リハビリ療法としての効果を検証していく。既に所属研究機関にヒトを対象とする研究計画書を提出し、ロボット等の機器を使用した対人実験に関して実施許諾を得ており、その実現性は高い。適応分野の拡大には、複合感覚刺激による運動認知強化を患者以外の一般健常者に適用し、複合感覚と移動性を利用した身体インタラクションによって、認知運動を誘発する働きかけや遊びを実現し、子供や高齢者などが身体を動かす動機を与えるアプリケーションに発展させる。
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