2015 Fiscal Year Research-status Report
スピーチを用いた聴性脳幹反応の補聴器フィッティングへの応用に関する研究
Project/Area Number |
15K12600
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白石 君男 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90187518)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 聴性脳幹反応 / 音声 / 補聴器 / 乳幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スピーチ刺激による聴性脳幹反応(以下、スピーチABR)を用いて補聴器フィッティングの客観的評価法を確立することを目的としている。そのため、今年度は、主にスピーカ法によるスピーチABRの刺激および記録条件を検討した。健聴な若年男性18名を対象とし、防音室内においてイヤホンまたはスピーカから長さ170 ms、基本周波数100 Hzの合成音声/da/を右耳に呈示してスピーチABRを記録した。呈示方法が異なることによって生じる差異に補正を施し、各呈示方法で記録した反応を時間軸と周波数軸で比較した結果、概ね同程度の結果が得られることが示された。しかし、スピーカ呈示によって記録した反応において、ノイズ成分の増加と一部の周波数の振幅の増加がみられた。今後はこの原因を究明し、その改善を施すことで音声刺激のスピーカ呈示によって記録した聴性脳幹反応の信頼性の向上につながると思われる。 次に健聴な若年者11名を対象に、スピーチABRについて波形が明瞭に記録され、かつ測定時間ができるだけ短く済むような加算回数について検討した。70 dB SPLの音声刺激/da/ (170 ms)を800回、刺激間間隔60 msとし、実験参加者の右耳に呈示した。これを1ブロックとし、11ブロック行い、計8,800回呈示した。振幅実効値(RMS)やSN比、周波数分析によるスペクトルのピークが加算回数によってどの程度異なるかを調べた結果、ノイズが除去されて明瞭に記録され、かつ最も測定時間の短い結果を得るためには、加算回数はクリック音に対するABRの場合の2倍以上の4,000回程度が必要だと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の「スピーカ法によるスピーチABRの刺激および記録条件の検討」の計画である、1)音場でスピーカ法による音声刺激の呈示方法と2)適切な加算回数の設定についての実験を遂行し、スピーチABRを音場法でおこなうための知見が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、呈示レベルを変化させた場合のスピーチABRの振幅と周波数成分の変化、補聴器の内部雑音がスピーチABRの振幅と周波数成分に及ぼす影響、補聴器の圧縮増幅がスピーチABRの振幅と周波数成分に及ぼす影響などについて検討をおこない、スピーチABRの補聴器フィッティングへの応用に対する本法の乳児や幼児における客観的評価法としての有用性と問題点を総括する予定である。
|
Causes of Carryover |
2015年10月に開催された日本聴覚医学会で本研究の成果を発表する予定であったが、データが未完成のため次年度に発表を行うこととしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年7月10日に開催される日本聴覚医学会第11回ERA・OAE研究会で研究成果を発表し、経費を執行する予定である。
|
Research Products
(4 results)