2015 Fiscal Year Research-status Report
虚弱高齢者に対する姿勢改善プログラムは嚥下機能をも向上させる
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15K12604
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Research Institution | Hirosaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
藤原 健一 弘前医療福祉大学, 保健学部, 准教授 (80325951)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 口腔機能 / 姿勢 / 介護予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,研究を3つのステップに分けて実施することとした.ステップ1では,評価方法および評価項目の検討を実施した.対象は,健常な大学生(男性)であった.評価内容は,年齢,BMI,頸部屈曲筋力,頸部伸展筋力,腹筋力,背筋力,握力,円背指数,頭蓋頸椎における頭部位置,甲状軟骨の位置,Forced Vital Capacity(FVC),%FVC,Forced Expiratory Volume 1.0sec(FEV1.0),FEV1.0%,Peak Expiratory Flow(PEF),舌筋力,咬合力,反復唾液嚥下テスト(RSST),Oral Diadochokinesis(OD),1回唾液嚥下時の筋電図(舌骨上筋群および舌骨下筋群の潜時,活動時間),嚥下音の潜時,口腔関連QOL(GOHAI)とした.結果,各評価項目の相関関係,検者内級内相関係数による信頼性の確認,高齢者に実施する場合の負担を考慮し,ステップ2の評価項目を決定した. ステップ2では,姿勢が口腔機能及び呼吸機能に影響を及ぼすのかを健常成人,健常高齢者,要支援および要介護者(虚弱高齢者)を対象に調査した.結果,健常成人では姿勢の違いが嚥下や呼吸機能に影響を与えないが,健常高齢者では甲状軟骨の位置の低下がRSSTの低下と関連があること,虚弱高齢者では円背姿勢が強くなるとODの低下と舌骨下筋群の活動時間が延長することが分かった.さらに,群間比較では,高齢者において喉頭の下降,呼吸機能の低下,嚥下機能の低下が認められた.また,虚弱高齢者は健常成人と比べて円背傾向が認められた. 以上のことから,高齢者や虚弱高齢者に対しては,円背姿勢の改善,喉頭位置の正常化を図り,嚥下関連筋群が活動しやすい姿勢をつくることが重要であり,姿勢の改善が口腔機能の向上に効果がある可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に購入を予定していた筋電計(筋電および映像・音声同時記録)ECGマスターが予算内で購入できなくなり,代替品を検討する必要性が生じた.特に,嚥下音を筋電図と同期して記録できる機器は高価であり,選定に時間を要した.今回購入できたのは,輸入品であり,嚥下筋の筋電図の記録は可能であったが,嚥下音を同期して記録できるような仕様とするまでに時間を要した.その結果,データの収集に遅れを生じたが,その間,別の機器を借用し,データを収集した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究成果から,高齢者は,加齢や廃用により背筋群の筋力が低下するため脊柱の後彎をきたし,円背姿勢を呈しやすい.円背姿勢は,胸郭の運動を制限し,呼気筋である腹筋群の筋力低下も助長するため,呼吸機能を低下させていると推察された.さらに,胸腰椎の後彎変形は二次的に頭部の位置を前方に偏位させ,代償的な頸椎前彎の増強を引き起こすと推察された.この頸椎前彎は,舌骨や甲状軟骨を下降させると考えられ,嚥下時の喉頭挙上運動に際して喉頭の移動距離の増加を招いている可能性が高い.このような機序により,円背姿勢を呈する高齢者の嚥下運動は拙劣となり,嚥下関連筋群の活動時間延長や嚥下運動時間の延長を招くのではないかと予想された.したがって,口腔機能の低下を自覚していない高齢者であっても,円背姿勢などの姿勢の変化が口腔機能を低下させている可能性が十分考えられるため,姿勢改善への介入が口腔機能の向上に有効である可能性が高い.そのため,平成28年度は,介護予防事業に参加する高齢者や要支援者を対象に,転倒予防体操などの姿勢改善や姿勢バランスの改善を目的とした体操を実施し,口腔機能の改善効果を検証する予定である.また,住民が主体的に介護予防に取り組めることが重要であるため,介入内容は高齢者同士で実施できるような転倒予防に関連する体操を予定している.なお,現在,姿勢およびバランス機能も含めた評価項目の検討,嚥下音の周波数解析の検討を実施しているとともに,本研究に同意していただける対象者を募集している. 平成27年度までの研究成果は平成28年度に論文としてまとめて投稿予定である.また,平成28年度の研究成果は平成29年度に投稿予定である.
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Causes of Carryover |
460円の差額が生じた理由は,購入予定であった筋電計が当初予定していた金額よりも若干安くなったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の繰越金460円を合算し,平成28年度に予定していた物品費(計測に伴う消耗品,介入時に必要な物品,データ処理に必要なPCおよびソフト等),旅費,その他論文作成に要する費用として使用する予定である.
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