2015 Fiscal Year Research-status Report
脳背景活動の変化に基づくコミュニケーション支援システムの研究
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15K12605
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
田中 尚樹 東洋大学, 理工学部, 教授 (10416943)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳背景活動 / 因果関係 / ブレイン‐コンピュータ・インタフェース / 脳波 / 近赤外分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,背景活動が局所脳血行動態低周波成分に現れていることを基本的な仮定として,それに関わる重要な因子間の関係によって背景活動を記述しそれを完全閉じ込め状態にある患者のコミュニケーションに利用することを目的とした.平成27年度は ①揺らぎ解析ツールの整備,②安静時およびタスク時の局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動間相互関係の解明,③具体的なBCIシステムの構成を行った. ①については,相互の因果関係を表現するGranger因果性と移動エントロピーの関係を確認し,非線形系に対しても適用可という観点から主として後者を用いた. ②については,被験者12名に対して安静時および右手指タッピング時の同時計測実験を行った.脳波はC3,C4電極で計測し8-30Hz帯域を対象とした.安静時では,心拍数変動→局所脳血行動態(18%)脳波振幅変動→局所脳血行動態(C3:45%/C4:47%)であった.ここで括弧内数字は局所脳血行動態への寄与率を示す.局所脳血行動態の低周波揺らぎは心拍数と脳波で約60%を説明できた.これに対しタスク時では,心拍数変動→局所脳血行動態(12%)脳波振幅変動→局所脳血行動態(C3:21%/C4:46%)であった.このことから,運動皮質の賦活によって局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動間相互の因果関係が変わり得ることが示された. ③について,近赤外分光(NIRS)計測,脳波計測に基づくブレイン-コンピュータ・インタフェース(BCI)システムを構成し,生体信号取得と制御信号送信の原理実験およびNIRS信号による意思判定の有効性確認を終えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ブレイン-コンピュータ・インタフェース(BCI)システムを構成する際,機器の不具合が生じ,それに対する対応が必要になったため,原理実験等を終えるにとどまった.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度構成したBCIシステムの有効性を確認し,YES/NO意思判定への応用を行う.入力には近赤外分光(NIRS)および脳波(EEG)信号を用い,局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動を抽出し,想像タスク等の遂行によるそれらの関係の変化を意思判定に利用する. 平成28年度の主たる課題は①タスクの選定,②EEG信号およびNIRS信号から抽出された局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動の相互関係変化を意思判定に反映するアルゴリズムの考案,③意思判定実験による有効性確認である.①については想像タスクを中心に有効なタスクを検討する.②については昨年度の結果に基づき比較的簡単なアルゴリズムを考案する.③では,まず,健常者において局所脳血行動態・脳波振幅・心拍数変動の3変数から2変数への絞り込みを行い,その後,本格的な検討を行う.
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Causes of Carryover |
主たる理由は,10か月間(2015年5月21日~2016年3月20日)使用した脳血流計測機器のレンタル料の支払いが2016年4月末になったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年4月中に脳血流計測機器のレンタル料金(108,000円)を支払い,残額13,543円は実験消耗品等に使用する予定である.
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Research Products
(4 results)