2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12617
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
河島 則天 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究室長 (30392195)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / リハビリテーション / 歩行装具 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では脊髄損傷者の装具歩行の神経生理学的意義とリハビリテーション効果に着目し、従来型の長下肢装具の機能や構造、材質に抜本的な改変を加え、健常者の歩容に近い歩行運動を実現するための新しい装具を開発・製作することを目指す。装具開発は従来型長下肢装具ARGO(Advanced reciprocating gait orthosis)をベースとして以下の改良を行う。①支柱よび機構部素材の金属からカーボンへの置換による軽量化、②下腿ソケット部素材のポリカーボネートからカーボンへの置換による足部弾性エネルギーの活用、③動力をもちいない歩行遊脚相の膝関節屈曲-伸展動作の付与。初年度終了時点ですべての機構を実装した一次プロトタイプの完成と適合評価を終え、2年目には各要素の改良設計・製作後に二次プロトタイプを完成、荷重応力試験機(国立障害者リハビリテーションセンター福祉機器開発部が所有)による耐久試験を経て、研究期間終了時に製品レベルの性能をもった歩行装具を完成させる。 脊髄完全損傷者については現在のところ歩行機能を再獲得できる可能性は皆無に近いが、最近の中枢神経再生に関する研究のめざましい進歩を考え合わせると、再生医療の実現を念頭に置いた脊髄完全損傷者の歩行機能再獲得に関する先見的な研究は極めて重要な意味を持つものと考えられる。脊髄神経の再生は、神経の組織解剖学的な再建に加えて立位・歩行を含む機能面での回復を実現してこそ成功といえることから、神経修復についての研究の進歩に呼応して、歩行機能再建のための効果的なリハビリテーション方法の検索に関しても多くの目が注がれるべきである。本研究で開発する装具は、歩行機能再建のための効果的なリハビリテーションを行う上での有効なツールとなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画は、開発装具の要素となる機構、部品を完成させ、脊髄完全損傷者が実際に装着し、歩行可能な状態にプロトタイプ1号機を仕上げることであった。既に計画通りに機構を完成させ、実際に歩行評価を行うことができた。本プロトタイプは、従来装具での歩行パフォーマンス相当の実現レベルを目標として製作したが、課題部のカーボン化により、使用者より歩行効率が良いとの感想を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、各要素の改良設計・製作後に二次プロトタイプを完成させ、脊髄完全損傷者を対象とした試用歩行を実施する。年度前半は、新たに実装した機構や部品が歩行運動中に円滑かつ効果的に動作しているかを検証する動作確認試験に力点を置き、28年度後半には修正や微調整を経て完成した装具による、麻痺下肢の神経活動への影響を検証するとともに、従来装具との歩行パフォーマンスの相違を検討するための効果検証試験を進める。並行して、完成した装具は荷重応力試験機(国立障害者リハビリテーションセンター福祉機器開発部が所有)による耐久試験を経て、研究期間終了時に製品レベルの性能をもった歩行装具を完成させる。
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Causes of Carryover |
機構設計や金属部品の切削加工は、外注に依らず当方試作により実施できたため、当初計上していた物品費は次年度の、詳細設計後の機構製作費に回すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
詳細設計後の機構・部品は実用化を念頭に置いて製作するもので、高い精度が求められることから、切削加工の高い技術をもつメーカーに発注・製作依頼する。また、評価の実施に際しては、脊髄損傷当事者、計測協力者の助力を得て、予算を効果的に使用しながら研究を推進する。
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